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大脳皮質の領野のうち、言語(話す、聞く、読む、書く)に関わりの強いところを言語野、言語中枢(language center)と呼びます。中でもブローカ野とウェルニッケ野が有名です。今回は、ヒトで特に発達した言語機能について見ていきましょう。
通常は左脳に存在
言語野は、ふつう大脳の左半球(左脳)にあります。98%の人は左半球にあるとされますが、人によっては右半球のこともあるようです。右利きの人は左半球に、左利きの人は右半球に言語野があるともいわれますが、実際は例外も多いです。
このため、言語野がない半球(普通は右半球)に障害を負っても、言語能力への影響は少ないといわれています。なぜ左右の半球で分担せずに左半球にのみ偏っているのかはよく分かっていませんが、両方の半球が拮抗しないように片側を抑制しているという説があります。
もっとも、右半球が何もしていないわけではないようです。発話や読み書きに直接関わらない他の機能、例えばユーモアの理解、比喩の理解、自分がどこにいるのか、他人がどんなことをしているかといった認識などは右脳が担当します。左半球の機能が低下したときにサポートするといった機能もあるようです1)。
よく「左脳は理論で、右脳は直感を担当している」といった話を聞きますが、役割分担は確かにあるにせよ、実際には左脳と右脳とでは様々な処理を分担・連携しており、一概にこうだとはいえないというわけです。
「話す」ブローカ野、「聞く」ウェルニッケ野
言語中枢は先述の「ブローカ野」と「ウェルニッケ野」に加え、角回や縁上回などの領域から構成されます(図1)。大ざっぱに説明すると、ブローカ野は「話す」、ウェルニッケ野は「聞く」を担当すると考えられています。ブローカ野とウェルニッケ野は、弓状束と呼ばれる神経の束で相互に連絡をとっています。
ブローカ野(Brocs'a area)は、前頭葉、ブロードマンの脳地図でいうと44野と45野のあたりにあるとされています。ただし、それぞれの領野はさらに細かく分けることができるようです2)。