ジェイテクト第2ステアリングシステム技術部の第1開発室室長、山本康晴氏
ジェイテクト第2ステアリングシステム技術部の第1開発室室長、山本康晴氏

 自動運転技術が進化する中でステアリングの役割が重要になってきている。ADAS(先進運転支援システム)におけるEPSの役割について、ジェイテクト第2ステアリングシステム技術部の第1開発室室長、山本康晴氏に話を伺った。

 「ADASの中でもEPSは特殊な位置付けにあるデバイスと言えます。というのも自動運転やレーンキープアシストなどの高度運転支援へ対応する一方で、システムの安定性がさらに求められるからです。万が一、EPSが故障しても、ステアリングの操舵をアシストするシステムを止めることは許されません。自動運転のレベル3を実現できる水準に到達しても、万一自動運転のシステムがダウンした場合、ドライバーが運転するようになってもEPSの機能は継続できていなければならないからです」。

 考えてみれば当たり前のことだ。現時点でもEPSの恩恵によってドライバーは意のままにステアリングを切って進路を変えているが、EPSが故障してしまえば、たちまち操舵には相当な腕力が必要になる。高速道路上だけで考えれば巡航中の操舵はそれほど力を必要としないが、もし自動運転が中止された場合は高速道路から降りられなくなってしまう。

 「まず必要とされるのはシステムの冗長化です。ECUの二重化によりソフトウエアの信頼性を確保。システムダウンしても、もう一方が機能を維持するようになるでしょう。ハードウエアもモーターを三層化して、万一のトラブル時にも50%以上のアシスト力を確保するようになると予想されます」。

 これはEPSを複数実装するようなものだから、複雑化や重量増は避けられない。しかしEPSの今後の役割を考えると進むべき方向性は冗長化なのである。車体の軽量化、当然ながらEPSの軽量化もますます追求されていくことになるだろう。