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HOMEクルマ車載部品最新カーエレの基礎を学ぶ > EV用無線給電技術は互換性が課題

最新カーエレの基礎を学ぶ

EV用無線給電技術は互換性が課題

EV用無線給電技術の標準化(下)

  • 花澤 理宏、中山 勝、山中 稔=UL Japanコンシューマーテクノロジー事業部 コマーシャルグループ R&Dチーム
  • 2017/04/12 05:00
  • 1/3ページ

出典:日経Automotive、2015年9月号、pp.83-85(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 鉄道無線設備とEV用無線給電装置については、10m以下の離隔距離でも共存可能な条件(設置条件)を作成することになった。具体的には、電磁界シミュレーションや机上の検討を中心に、いくつかの条件下で共存方法を検討した。しかし、こうした検討を進めていく中で、電磁界シミュレーションは有力な方法の一つだが、その信頼性を確認する必要が出てきた。そこでまずは、電磁界シミュレーションモデルと同様の実験環境を構築し、両方の結果を比較することにした。

 実車を用いた実証実験は2015年3月に、UL Japan山北EMC試験所のオープンサイトで行った(図2)。実験では、「IEC TC69/PT61980」や「SAEJ2954」といったEV用無線給電技術の国際標準規格に採用される可能性の高いソレノイダルタイプのコイルを送受電に用いて、受電システムを搭載した市販車からの漏れ電磁界を測定した。実際の測定では、送電コイルと受電コイルの中心を100mmずらし、送受電コイルが正対した場合に比べて漏れ電磁界が大きくなる条件で行った。使用した周波数は85kHz帯である。

図2 実車を用いた測定の様子
UL Japanの山北試験所(神奈川県足柄上郡)で行った実証実験では、ソレノイダルタイプのコイルを用いた受電システムを実車に搭載し、同システムからの漏れ電磁界をオープンサイトで測定した。
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 85kHz帯の周波数を使うと、一般的な電波暗室に用いられている電波吸収体では十分な吸収性能が得られず、測定誤差が大きくなる恐れがあったため、オープンサイトで測定した。実際には、ターンテーブルの上に受電側のEVと送電側の機器を配置し、ターンテーブルを回転させて磁界強度を測定した。

 その結果、送電コイルの中心から10m離れた位置における磁界強度は、既に答申が出ている小電力無線機器の漏れ電磁界以下のレベルにあることを確認した。この結果は、実車を用いた実験に先立って行った電磁界シミュレーションの結果とも良く一致した。

 次に、鉄道事業者や総務省、国土交通省、BWFの関係者の立会いの下で、鉄道車両に搭載している自動列車停止(ATS)装置の実機を用いた検証実験を行った(図3)。先の実験と同じULJapanの山北EMC試験所で行ったこの検証実験では、受電システムを搭載した市販車にATS装置を接近させ、どこまで近付けるとATS装置が誤作動を起こすかを調べた。その結果、電磁界シミュレーション結果と同様の距離まで近付けると、ATS装置が誤作動することを確認できた。

図3 ATS装置の実機を用いた検証実験の様子
鉄道事業者や総務省、国交省、BWFの関係者の立ち会いの下、UL Japanの山北試験所で行った実証実験では、ATS装置(左)を実車(右)にどこまで近付けるとATS装置が誤作動するかを調べた。
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 これらの検討結果から、電磁界シミュレーションは実際の現象に対する再現性が高いことが分かった。そのためEV用無線給電機器とATS装置などの鉄道設備との共存方法の検討では、電磁界シミュレーションを用いることでBWFや鉄道関係者との間で合意した。これらの実証実験の結果は、情報通信審議会の報告案にも掲載され3)、EV用無線給電技術の標準化に向けた重要な成果の一つになったと考えている。

 さらに、2015年7月17日に開催された総務省の情報通信審議会で、85kHz帯を用いたEV用無線給電技術が答申された。「EV用無線給電装置の出力は7.7kW以下」「ATS装置などの信号保安設備との離隔距離はレールから4.8m以上」といった条件が盛り込まれた。これにより85kHz帯を用いたEV用無線給電技術は、法制度化に向けて大きく前進した。今後は後述する国際標準規格の策定状況を踏まえながら、送受電コイルの形状や相互接続性の確保などの検討を行うことが不可欠である。

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