欧州の研究プロジェクト「MotorBrain(モーターブレイン)」は、レアアース磁石を使わない電動車両(xEV)用小型モーターを開発した。プロジェクトの中心メンバーであるドイツInfineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)社が、新モーターの詳細を解説する。

 ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)などの電動車両(xEV)市場は、今後の大きな成長が見込まれている。エンジンの燃費改善といった従来型のパワートレーンの改良だけでは、CO2排出量の大幅な削減といった世界の厳しい環境規制に対応するのに十分とはいえないからである。

 有力な対応策として、パワートレーンの電動化が挙げられる。目標達成のためには、小型で費用対効果の高いモーターとインバーターの開発が必要になる。一方で、パワートレーンの電動化は大幅なコスト増加につながる。環境性能に優れたxEVであっても、エンドユーザーに価格アップを受け入れてもらうのは難しい。電動パワートレーンのコスト低減も重要な課題になる。

 こうした状況を受けて、ドイツの企業や研究機関などで組織するコンソーシアムは、xEV向けの新しい電動パワートレーンの開発に取り組んでいる。同コンソーシアムの「MotorBrain(モーターブレイン)」と呼ぶプロジェクトの主な目標は、「xEVシステムの効率改善」「モーター用磁石のレアアースフリー化」「安全性の向上」などである。最新の成果としてインバーターとモーター、ギアドライブを一体化したプロトタイプシステムを開発し、大幅な小型化と軽量化を実現した(図1)。

図1 出力60kWの小型モーター
大幅な小型軽量化を図り、ノートパソコンのバックパックに収まるサイズにした。電力密度と安全性を高めており、レアアース磁石を必要としない。