SiCパワーデバイスを採用すると電源部品の性能を大きく高められるが、現時点で自動車に採用するには工夫がいる。SiC製品を使うと部品単体のコストは上がってしまうからだ。このためシステム全体としてコストを下げるように、あるいはコストの上昇に見合う利点が出るように設計する必要がある。

 例えばSiCショットキー・バリア・ダイオードをいち早く採り入れたメーカーは、性能面での優位性を生かして部品を減らして小さくした上で、効率を高めて高いコストに見合う以上の効果を生み出している。

 具体的には雑音対策部品を減らすことや、リアクトルといった大型部品を小さくしている。ショットキー・バリア・ダイオードのリカバリー時間は短いので、採用すれば基本的に電磁雑音は減る。ただしリアクトルなどを小さくするために動作周波数を100kHz以上まで高めると、電磁雑音が増える。

 また周波数を高める際にスイッチング速度を上げると、サージやリンギングが大きくなりやすい。対策として、配線距離を短くすることや相互インダクタンスを利用して配線部に生じるインダクタンス成分を削減する工夫がモジュール内部や周辺回路にいるだろう。こうしたトレードオフのバランスを取りながら全体としてメリットが大きくなるように設計しなければならない。

 一方でSiC製MOSトランジスタの量産品への採用はこれから。自動車部品で採用が始まるのはまず充電器で、その後、コンバーター、インバーターという順になるとみる。採用時にはダイオードの場合と同様に電磁雑音やサージ、リンギングなどへの対策が重要になる。