炭化ケイ素(SiC)基板から作るパワー半導体デバイスに注目が集まっている。ダイオードについては量産車への採用が既に始まった。トランジスタへの採用も近い。SiC製パワー半導体の開発を手掛けるロームが、その特徴や採用する際のポイントを示す。

 SiC材料から作るパワー半導体デバイスをハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車に採用すると、現状のシリコン(Si)材料から作るものに比べて、車載充電器やコンバーター、インバーターなどを小さくし、効率を大きく高められる(図1)。例えばインバーターのダイオードをSi製からSiC製に置き換えると電力損失を2~3割程度減らせる。トランジスタをSiCにすると、電力損失をさらに減らせる。ロームはSiC製のダイオードやトランジスタを量産しており、単体やモジュールとして提供している(図2)。

図1 SiC製パワー半導体デバイスの外観
左がMOSFET、右がショットキー・バリア・ダイオード。ともにローム製。
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図2 SiCモジュールの外観
ダイオードとMOSFETを内蔵する。
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 SiC製のダイオードとトランジスタのうち、採用が始まっているのがダイオードである。既に車載充電器の量産品に採用されている。

 一方、トランジスタについては、JFET(接合型電界効果トランジスタの略称で、ゲート下にpn接合を設け、空乏層でドレイン電流を制御するもの)やMOSFET(電界効果トランジスタの一種で、ゲート絶縁膜として酸化物を形成し、その上に金属電極を配置したもの)の量産が始まっている。自動車の量産部品に採用されるまでには少し時間がかかりそうだが、各社が採用を検討している。今後の自動車開発で重要性が高まっていくだろう。