これまでになかった新しいサービスの創造には、新しいプレーヤーが必要だ。大手電力・ガス会社とは異なる視点や強みを持ったエネルギーベンチャーが育ってこそ、エネルギービジネスは面白くなる。長年、エネルギーベンチャーを見てきた野村リサーチ・アンド・アドバイザリーの高橋浩明・調査部主任研究員に、エネルギーベンチャーが歩んできた道のりと今後を解説してもらった。

紆余曲折の20年を経て復活期へ
エネルギーベンチャーを取り巻く環境変化と主な出来事

 日本のエネルギーベンチャーは、これまで、政策変更、原油や為替動向、大手企業の参入など外的要因に振り回されてきた。ベンチャーブームが起こるも、数年経つと外的要因の変化でブームがしぼむ。これを何度も繰り返してきた。

 1997年の京都議定書の採択が、日本のエネルギーベンチャーの出発点である。温暖化対策の盛り上がりとともに、電力自由化も部分的に進行した。この黎明期に、省エネや風力発電などの分野でエネルギーベンチャーが数十社、誕生したとみられる。

 黎明期のベンチャーは2000年代に入ると続々と株式市場に新規上場(IPO)を果たした。自家発電代行ビジネスを成功させたエネサーブが2000年に上場したのを皮切りに、2003年に日本風力開発、2004年に省エネサービスを提供する省電舎、2005年にバイオマス発電所を運営するファーストエスコ(現エフオン)と続いた。

 しかし、2005年ごろからマイナスの外的要因が重なり、エネルギーベンチャーは冬の時代を迎える。原油価格の高騰で自家発電の競争力が低下し、自家発電の代行ビジネスは立ち行かなくなった。省エネ支援ビジネスは大手企業の本格参入で、ベンチャーは競争激化の渦に巻き込まれた。

 風力発電分野では、ユーロ高による輸入風車の価格高騰、姉歯事件(2005年に発覚した構造計算書偽造問題)に端を発する新建築基準法適用によるコストアップ、民主党政権下での建設補助金の打ち切りなどの逆風が吹いた。

 その後もエネルギーベンチャーを取り巻く環境は悪化の一途を辿り、2008年のリーマンショックがとどめを差す形となった。IPOを遂げる企業もほぼなくなった。

 次のベンチャーブームは、2012年7月にスタートした再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が契機である。FITスタートを見越して、メガソーラーへ新規参入するベンチャーが急増した。

 FITの当初の買取価格は非常に高く、参入障壁が低かったため、数十社のベンチャーが登場した。太陽光発電で収益を稼ぎ、さらに電力需給管理技術を強みに電力ビジネスでのイノベーションを目指したエナリスが2013年10月に東証マザーズに上場した。エナリスの株式市場での高評価を受けて、数多くのソーラーベンチャーも株式上場を目指し、IPOブームの訪れを期待させた。

 しかし、このベンチャーブームも冷や水を浴びせられる。2014年秋の「九電ショック」(大手電力が太陽光発電などの系統接続を保留)とFIT制度の見直し議論の本格化である。IPOを準備していたソーラーベンチャーは、事業計画の見直しを迫られた。結果として、IPO計画を延期・中止せざるを得なくなったベンチャーは、10社近くもあった。

停滞乗り越え、再びベンチャーブーム到来

 そして今、2014年から約2年の停滞期を経て、エネルギーベンチャー復活の兆しが見え始めている。2017年3月に、再エネ発電に取り組むレノバがIPOを達成した。金融スキームの構築とアライアンス戦略を駆使した特色あるエネルギーベンチャーである。

 2016年4月の電力小売りの全面自由化と、2017年4月のガス小売りの全面自由化は、当初期待したほどの爆発的な盛り上がりを見せているわけでない。しかし、この2つの出来事だけでなく、2011年3月の東日本大震災を契機にしたエネルギー業界の構造的な変化は本格化している。この変化が、エネルギーベンチャーの復活を支える。