東電F&Pの売上単価の減少は、東電EPへの卸値単価の切り下げを物語っているのではないか。つまり、2016年4月~2017年3月は全面自由化が始まる前の2015年4月~2016年3月に比べて、東電EPは安値で東電F&Pから電気を調達していた可能性がある。

 それでも、何らかの事情で安く発電できていたとしたら、卸電力市場への投入や常時バックアップの価格にも反映されてしかるべきだが、そのような様子はない。それどころか、卸電力市場への売り札をルールである限界費用を大きく上回る高値で入れていたことが発覚し、2016年11月、東電EPは監視委員会から「相場操縦」を理由に業務改善勧告を受けた(「自由化1年目の電力市場、東電による2大事件」参照)。

 大口需要家を対象にした東電EPの安値攻勢は、東電F&Pからの安値調達に裏打ちされたもので、言い換えれば、東電F&Pから東電EPへの利益の付け替えが値引き原資になっていたと言えるかもしれない。

当日の大量余剰電力の謎

 電気事業法には、発電部門と小売部門間の仕切り値に関して特に規定はない。仮に東電EPが東電F&Pから、市場価格や常時バックアップ価格からかけ離れて安値で調達していたとしても法的な問題はない。

 だが、競争環境のイコールフッティングの観点からは問題視する見方はあろう。いわゆる「内外価格差」問題だ。電気の卸値にグループ内(社内)と、新電力や他の大手電力への供給で恣意的に大きな差をつけるのは、全国規模で高効率(安値)の電源から利用していく(メリットオーダー)という自由化の理念実現を損なうことにならないか。

 そもそも東電グループが分社化で目指す、各部門の利益最大化の理念に反する。これは、福島への責任を果たす観点から、また、グループの利益を最大化するうえからも考えるべき視点ではないだろうか。

 もう1つ、東電EPと東電PG間はどうか。大手電力のネットワーク部門は公共財として扱われ、現時点でも他部門との「会計分離」が義務づけられている。そのため、グループ内企業であっても託送料金が割り引かれることはあり得ない。

 では、なぜ、東電EPから東電PGへの電力量あたりの支払い単価が下がったように見えるのか。

 全面自由化以降、東電エリアでは、他のエリアに比べて恒常的に大量の余剰インバランス(需要を上回る電力供給)が出ている。最近になってある有識者会合のメンバーにデータが示された。余剰インバランスの規模からみて、原因が東電EPにあることは誰の目にも明らかだ。