共同事業体をパートナーに売却することも覚悟

 中部電は当初から一貫して、東電の福島への責任を分担する可能性に強い警戒感を抱いてきた。2014年10月に東電との「包括的アライアンスに係る基本合意書」を締結したが、その際にも「今後の詳細協議の前提」として、合弁会社の経営体制について「自律的な事業運営及び迅速な意思決定の確保が可能となる経営体制を構築する」ことを条件としていた。

 さらに、JERAの統合作業の進め方に関しては、いくつかの段階を経て慎重に進めることとし、基幹事業である既存火力発電事業の統合(ステップ3)は2017年春を目標としてきた。これは、中部電が東電との共同事業の解消が困難となる前に、東電の福島への責任との遮断の実効性を見極めるためのプロセスであった。

 今回、東電の新々総特の正式発表を経て、中部電がJERAの統合作業の最終段階である既存火力発電事業の統合を決定したことは、中部電にとって最大の懸念事項であった福島リスクの遮断方法について、同社がその実効性を認めたことを意味している。言い換えれば、「配当ルール遵守の仕組み」には、中部電から見て充分に実現可能な発動条件が設定されているということだろう。

 6月26日にJERAは格付投資情報センター(R&I)の格付けを新規に取得したが、その格付けの理由において「東電の事故処理の潜在債務のリスクを強く織り込む必要はない」とされていることも、この見方に沿っている。

 新々総特において、さらに特筆すべきは、項目⑤に、「こうした観点からは、・・・出資比率(50%以上又は50%未満の議決権比率等)について、東電は柔軟性を持つこととする」と明記してあることである。これは次の項目⑥「国の関与の在り方と公的資本回収」の項目に、公的資本の回収の手法について、「東電が共同事業体に対して保有する持分の取扱いも含め幅広く検討する」とあるのに符合し、東電が共同事業体のパートナーへの売却も辞さない覚悟であることを示している。

 その意味するところは、国が単に公的資本回収を急ぐということではない。共同事業体の企業価値を最大限に高め、その上で、パートナーの負担と切り離したかたちで福島への責任を果たしていくという意図である。