東京電力ホールディングスは6月23日の株主総会で経営陣を一新。日立製作所の川村隆名誉会長が会長に、小売部門の東電エナジーパートナー(EP)社長を務めていた小早川智明氏が社長に就任した。東電は新体制の下、アライアンスを軸とした成長路線を進む構えだ。長らく垂直統合型の事業モデルを守ってきた東電は、どこまでアライアンスに本気なのか。アジアエネルギー研究所の廣瀬和貞代表に解説してもらう。

 東京電力グループの再建計画「新々・総合特別事業計画」(新々総特)は、5月18日に経産大臣の認定を受けた。福島第1原子力発電所事故の賠償・廃炉費用の倍増を受けて策定した新計画は、事故責任を果たす「福島事業」は国の管理・支援を受けつつ、資金を生み出す「経済事業」はアライアンスによる収益拡大を目指すという。今後は、新体制の下、東電がこの事業計画をいかに遂行して行くかが焦点となる。

 新々総特では、送配電事業・原子力発電事業に関して、他社との「共同事業体」の設立を計画している。だが、新々総特の認定に先んじて4月に公表された「骨子」では、東電と共同事業体を作るアライアンス・パートナーにとって、東電が抱える福島への責任に引きずられて自社の信用力が低下するリスクがあった。電力会社としての基幹事業である送配電や原子力の事業や資産が東電と一体化してしまうと、共同事業の解消も売却も困難になるからである。これは前稿「東電はパートナーとして『安全』か?」で解説した通りだ。

 この点に関して、5月に全文が公表された新々総特においては、踏み込んだ内容の対策が講じられている。各事業会社を東電グループから切り離すことも辞さないという、東電の本気度がにじむ内容だ。

 まず、最初のポイントは、新々総特の第1部(新々総特の全体像)の「(3)新々総特の枠組み、経営の基本方針」の⑤として、「共同事業体の設立を通じた再編・統合」という項目が設けられ、第1段落に「潜在的パートナーの理解を得ることが必要である」と記載されていることだ。

 東電が本気で進めようとしているのは、共同事業体の自律的経営と財務健全性である。上記の項目⑤においては、「共同事業体が市場から信任され、財務・経営の自律性が持続的に確保できるよう、以下のような措置を講ずる必要がある」として、「配当ルールや達成すべき財務ベンチマークを設定し、関係者にコミット」することが例示されている。