ロボットの手も借りたい――。電力小売りに参入して以来、日々の事務処理に追われてきた新電力の間で、そんな思いが強まりつつある。

 「最近になって、ロボットの導入を検討したいといった新電力からの問い合わせが増えてきている」。エネルギア・コミュニケーションズ(広島市、エネコム)情報システム本部の梶川祐朗ITサービス事業化プロジェクト部長は、こう話す。

 梶川部長が言うロボットとは、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」と呼ぶツールで開発したソフトウエアロボットだ。事務処理の手順をソフトウエアに覚え込ませて自動化する。人手に頼ってきた作業の効率化を図れるとして、銀行や製造業をはじめ幅広い企業の間で注目度が高まっている。

 エネコムは中国電力のIT子会社である。2017年7月末にRPAツール大手のRPAテクノロジーズと提携。ソフトウエアロボットをネットワーク経由で提供するクラウドサービス「エネロボクラウド」を11月28日に開始した。

 RPAツールの導入支援を手掛けるシステムインテグレーターやコンサルティング会社は増えているが、ソフトウエアロボットのクラウドサービスを提供する例は、まだ珍しい。RPAツールを活用する国内企業はほとんどが、自社でサーバーやパソコンを用意してシステムを構築している。

 実運用を始めた新電力はまだないが、エネコムには12月上旬までに新電力からの引き合いが相次いでいる。「同じような内容を繰り返す作業の量が、当初想定していた以上に多い。そう実感している新電力は少なくない。ロボットにもすがりたいという状況なのだろう」と梶川部長は見る。

新電力に加えて、大手電力も導入準備中

 電気事業の事務処理には、ある程度手順が決まっているものが多い。例えば、契約の新規獲得時には申込者の氏名や供給地点特定番号に基づき、電力広域的運営推進機関(広域機関)のシステムを介して、元の大手電力会社から新電力へ契約を切り替える。手続きの大きな流れは契約者によらず基本的に共通だ。100件の申し込みを受け付けたら、1件ずつ情報の漏れや誤りなど一切の間違いがないか確認しながら、100回の処理を繰り返す。

 このように同じ作業を契約単位で正確に繰り返す事務処理は、たくさんの例外を想定しなければならない処理に比べ、RPAツールがフィットしやすい。RPAツールに関する情報を目にする機会が増えてきた今、ソフトウエアロボットの有用性に気づいた新電力は「おそらく当社への問い合わせ件数よりもずっと多い」と梶川部長は話す。