供給開始予定日や料金支払いなどについて説明した重要事項説明は、電力サービスを契約するかどうかの判断材料になる。そのため契約締結の前までに交付することになっているが、申し込み手続きの完了後、契約内容の案内と併せて、改めて重要事項説明の書面を郵送したりする。
この場合、需要家が数十万件に満たない規模だと、「CISを操作して新規契約者のリストをExcelで作成し、需要家ごとに契約内容を印刷して、重要事項説明書と併せて発送する一連の準備を人手でやっている新電力は少なくない」(新電力のシステムに詳しい前出のコンサルタント)。
あるいは日次や週次、月次の事業の収支管理でも、人手による作業が常態化している。CISで計算した電気料金のデータや、需給管理システムで管理する電源調達の費用、試算した託送料金のデータを「新電力の経営企画部門などの社員がExcelを使って手作業で集計している」(同上)。
いずれの業務もシステムの操作内容や、システムから取得すべきデータが決まっているので、RPAツールを使って自動化しやすい。RPAツールは「ちょうどExcelのマクロを使って同じ処理を繰り返し実行するようなもの」(大角社長)。動作に不安を抱えた真新しい技術ではなく、電力以外の業界で安定稼働の実績が豊富な“枯れた”技術である。
Excelマクロと違うのは、ExcelやWordに限らず、ブラウザを使ったインターネットサービスの操作や社内システムの操作など、パソコンを使って処理しているあらゆる業務を自動化の対象にできる点だ。
自動化対象の業務の種類や量、求められる処理スピード、展開するソフトウエアロボットの台数などによって、RPAツールの導入費用は数千万円規模に達する。それでも、業務に慣れた社員の突然の離職や人材の新規採用に難儀しているのであれば、導入を検討してみる価値はあるだろう。
RPAツールは「集中力を保ったまま、求められれば24時間365日、文句ひとつ言わずに黙々と正確に作業を続けてくれる」(大角社長)。繁忙期に社員の過重労働を回避することにもつながる。
3月から4月にかけて転居に伴う電力サービスの契約切り替え需要の増加が見込まれる。書き入れ時の事務処理にあたる社員の負担を少しでも軽減するためにも、早めにRPAツールの適用可否や想定される効果の事前検証に着手したいところだ。