経済産業省が公表している電力調査統計を参考に、月別の電力需要実績に基づく事業規模ランキングを作成したところ、みんな電力は家庭向けなど低圧電力の分野でトップ100にも手が届いていない状況である。

みんな電力の販売電力量は新電力で124位
みんな電力の販売電力量は新電力で124位
低圧部門の販売電力量ランキング(2017年6月)
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 東京ガスとKDDI、大阪ガスのトップ3は別格だが、参考までに6月の低圧部門の電力需要実績は3社とも1億kWhを超える。前述したライバル新電力Looopの実績は1560万kWhで14位。36位のエルピオは390万kWhとグンと小さくなるが、これと比べても、みんな電力の40万kWhは桁違いに小さい。

 この数値だけを見れば、現時点で競合を脅かす存在ではない。それでも今回、みんな電力に着目したのは、ENECTが潜在顧客との接点を作り出す集客用のWebツールとして、ジワジワと成果を上げ始めていることが明らかになったからだ。同社が提供する低圧電力の契約者は着実に伸びており、契約数はENECTへの訪問者だけで1500件を超えた。

 「現在はRE100関連の法人向けビジネスに注力しているのに加え、低圧電力のサービスは関東でしか提供していないので、どうしても契約数は限られる」。大石英司社長はこう話し、あくまでも今時点では個人向けの事業に全力を注いでいないことを示唆したうえで続ける。

 「これから段階的にサービス提供エリアを拡大していくにつれて、契約数は1万件程度まで自ずと増えていくはず。将来的には、月間1億円ほどの売上高を生み出すツールになるポテンシャルがENECTにはある」。

プロを招聘して編集体制を確立

 ENECTには大きく3つの特徴がある。1つは、小規模ながら社内に編集部を設けている点だ。

 ENECTを立ち上げるため社外から編集長を招聘すると共に、みんな電力社内で新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)関連のプロジェクトを担当していた竹蓋優貴氏を編集部に加え、2人体制でコンテンツの企画や編集を手掛けている。

 編集長を務めるのは、フリーランスのライターとして活躍してきた平井有太氏。東日本大震災後に福島県に移り住み、放射性物質による汚染状況を調査する土壌スクリーニングにも取り組んできた、知る人ぞ知るプロのライターである。

 エネルギー業界の外に目を向けると、ENECTのようなオウンドメディアを開設している企業は珍しくない。だが、掲載するコンテンツの企画から取材、執筆、編集まで外部の制作会社や編集プロダクションに丸投げし、「オウンド(Owned)」とはかけ離れた運営をしているケースが目立つ。