外部から統括責任者を招へい、プロパー社員も採用
統括責任者の不在が広域機関システムを巡る一連のトラブルの主因だとした第三者評価委員会の指摘を受け、広域機関はすでに対策を講じている。具体的には、2017年6月8日付でPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)を設置した。
PMOとは、システム開発の計画やリスクの管理からトラブル対応まで、プロジェクト全体を統括する組織。大規模なシステム開発プロジェクトで設置するケースがよくある。広域機関はPMOで実務にあたる統括責任者として、日本IBMからプロジェクトマネジメントの専門家2人の招へいを決定した。
広域機関のPMOは、システムへの実装を先送りした機能の開発や、仕様変更の反映が放置された仕様書などの整備を含めマネジメントする。2017年4月1日に始まった「ネガワット取引」の対応機能の開発もPMOの下で本格化させる。
さらに、広域機関ならではの課題を解決すべく、システム人材も増員中だ。主に大手電力からの出向者で構成する広域機関の社員の大半は、3年間の出向期間満了後に所属元に戻ってしまう。4年以上にわたり開発や運用を経験することがないため、広域機関システムに精通した社員がいつまでも育たず、手を打たなければこの先も恒常的に人材不足を招く。
そこで広域機関はまず、2017年7月1日付で2人の技術者を新規採用し、1人だけだったシステム担当のプロパー社員を3人に増やした。さらに、広域機関システムの開発に携わってきた技術者3人を日立からの出向で新たに受け入れるなど、従来18人だったシステム担当の陣容を総勢25人に拡充すべく調整している。
マネジメントの不備により難航を極めた広域機関システムのプロジェクトを、システム開発編とプロジェクト体制編の2回に分けてみてきた。今回取り上げた統括責任者の不在に関してはあまりに初歩的な問題である。一方、PMOの設置はいかにも教科書的な対策という印象が強い。だが、前回のシステム開発編で詳述したプロジェクトの実態を含め、失敗の子細を30ページ近くにおよぶ報告書に分かりやすく残した点は十分に評価したい。