「総じて成功」も、軽微なトラブルは避けられず
関電は、確定値や託送料金の計算など2016年4月1日より後ろに稼働時期がずれ込んでも業務に支障をきたさない機能を除き、2015年12月末から順次動かし始めると同時に性能チューニングや不具合の解消を図り、託送業務システムの品質を高めていった。その結果、30分値提供の本番となる2016年4月1日午前0時から「ノートラブルとは言わないが、大よそ問題なく動かすことができた」(IT戦略室の木村担当課長)。
とはいえ、手戻りを余儀なくされた基本設計が以後の開発やテストの工程に食い込んだ影響は、皆無ではない。限られたテスト期間で洗い出しきれなかった軽微な不具合が、託送業務システムの稼働後に顕在化するケースもあった。
例えば、小売電気事業者に提供する30分値に併せて記載する「事業者名称」が、一部で正しく生成できない問題が本番後に発覚した。半角80桁以内で事業者名称を記載すべきところ、誤って全角80桁以内で記載したため、長い名前の事業者の名称が欠落した。木村担当課長は「全角だと勘違いしたまま開発を進め、最後のテストでも不具合を漏らしてしまった」と悔やむ。
そもそも、全面自由化から1年以上が経過した現時点でも、託送業務の要件をすべてシステムが満たしているわけではない。「プロジェクトの期間を十分に取れなかった」(木村担当課長)こともあり、発生頻度が少ない例外処理に相当する機能は実装を先送りし、当面は手作業でしのぐことにしたからだ。そのため関電は託送業務システムのプロジェクトを解散せず、積み残した機能の開発とテスト作業を今も続けている。