東電が出資したモイクサは英国から海外進出を目指す

 家庭への蓄電池普及が進むオーストラリアでも、VPPビジネスの検討が始まっている。

 豪大手電力のAGLは2016年夏から、同社の顧客で、太陽光の発電量が消費量を上回るなどの条件を満たした家庭を対象に蓄電池を設置し、顧客の余剰電力をエリアの需要のピーク抑制に利用するVPPの実証実験に取り組んでいる。

 VPPプロジェクトは150軒を対象に実施。プロジェクト全体にかかる費用は2000万豪ドル(約16億8000万円)で、このうち500万豪ドルを政府系の再生可能エネルギー推進機関であるAREA(Australian Renewable Energy Agency)が負担する。

 参加家庭はサンバージ製の蓄電容量7.7kWhの蓄電池システムを3499豪ドル(約29万円)で購入するが、その費用はVPPプログラムへの参加報酬や電気料金削減の効果で比較的短期間に回収できるという。AGLは実証実験で事業性を見極め、近く本格的なビジネスとして展開する予定だ。

 欧州では英国のエネルギーベンチャーであるモイクサテクノロジーが、家庭向けに販売したリチウムイオン蓄電池をVPP運用し、英国の系統運用者であるナショナルグリッドの系統安定化用電源として活用するビジネスモデルを打ち立てた。この4月には、東京電力が同社に出資したことから、国内でも注目が集まった(「東電が出資した『電力会社を破壊する技術』」参照)。

 モイクサは「蓄電池へのニーズは今後、世界的に高まっていく」(同社幹部)と見ている。固定価格買取制度が廃止されたり、電気料金が上昇している国や地域では、家庭などに設置した太陽光を自家消費するニーズ強くなる。加えて、各国で再エネの導入量が増えると、系統安定のための電源を蓄電池のVPP運用で賄う機運も高まるというのが理由だ。

 同社は英国以外への展開にも強い関心を示しており、オランダやポルトガル、米カリフォルニア州などへの進出を有望視している。

 国内でも2019年以降、固定価格買取(FIT)の期間が終わる家庭用太陽光発電が増えていく。太陽光の自家消費が増える中で、蓄電池のコストが下がり、普及が進めば、欧米と同様に遠くない将来、蓄電池VPPがビジネスとして発展する可能性は十分にある。

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