駆け込み申請によって、バイオマスは過剰認定状態に陥りました。政府の「長期エネルギー需給見通し」は、2030年のバイオマス電源比率を3.7%~4.6%(394億~490億kWh)としています。この比率をFITが想定している設備利用率を用いて設備容量に換算すると、602万~728万kWとなります。

 今年3月末時点での認定済み設備容量1242万kWと比べると、2030年度の導入見込量の2倍を超えているのです。さらに、認定申請中の設備容量が今年3月末時点で約380万kWもあります。このうち、2017年4月~9月末の期間中にFIT認定を受けたバイオマス発電の設備容量は約131万kWです。バイオマス発電の申請や認定は過剰と言わざるをえません。

長期需給エネルギー見通しの倍を超えた
長期需給エネルギー見通しの倍を超えた
西暦2030年度の電源構成(出所: 「再生可能エネルギーの現状と本年度の調達価格等算定委員会について」 第30回調達価格等算定委員会、配布資料1、5頁から一部抜粋)
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【質問2】バイオマスの過剰認定は明らかなのですね。経産省はこの過剰認定状態をどうやって収束しようとしているのですか。

【回答2】一部報道によれば、経産省はバイオマスの新規FIT認定の“制限的運用”を検討しているようです。既設の石炭火力発電所における木質バイオマス混焼案件や、石炭・石油火力などの既設の火力発電所を木質バイオマス専焼に変更する燃料転換案件の新規FIT認定について、経産省は相当に慎重になる可能性があります。

 FITの買取価格は再エネ発電事業者が適正利潤を得られるように設定されています。既設火力の燃料にバイオマスを利用してFIT認定を受ければ、事業性が向上し発電設備の延命につながります。しかも、FITの買取期間終了後に、燃料が割高なバイオマス発電では採算が合わず、再び石炭火力として運用するようなことがあれば、FITの趣旨に反します。

 したがって、経産省は今後、「設備投資を伴わないバイオマス案件への政策的補助は制限する」という立場を明らかにする可能性があるのではないかと見ています。

自立を促すために「燃料費は支援しない」

 さらに経産省が、新設火力のバイオマス発電が設備投資を伴うにもかかわらず、FIT認定を制限的に運用する方向性を打ち出すとしたら、それは賦課金による国民負担の増大を防ぐため「FITは燃料費を補助しない」という考えに立つことを意味します。

 FITの趣旨に則れば、FIT期間終了後は再エネ電源として自立しなければなりません。燃料費がかからない太陽光や風力は、FITで初期投資の支援を受けることで、十分に自立可能です。ところが、バイオマス発電は、発電コストに占める燃料費の割合が、専焼で約7割、混焼で約4割に上ります。FIT期間中に燃料費の低減策を講じる必要があります。

 自立できない再エネ電源をFIT制度で支え続けることは、法の趣旨に合わないため、FIT制度の見直し余地が出てきます。既に調達価格等算定委員会(第30回)の配布資料でも論点の1つに挙げられています。自立を促進するために、「FIT制度は燃料費を支援しない」という政策が検討される可能性がありそうです。

 なお、既にFIT認定を取得済みのバイオマス発電案件が、過剰認定を理由に認定を取り消されることはありません。もともとFIT制度は、買取価格のレベルと設定時期の調整により再エネ電源の導入量・導入速度をコントロールする政策です。事後的に過剰認定状況が判明したこと自体は、認定取消事由として法定されていません。