デリバティブ取引は、将来の市場における商品の価格変動という「偶然」によって、金銭授受の額が決まることから、形式的には刑法上の賭博罪に該当するおそれがあります。ただし、金融商品取引法及び商品先物取引法に定めるデリバティブ取引は、ルールに従って行う限り賭博罪には該当しません。他方、商品先物取引業者以外の相手と、商品市場における相場を利用して取引所外で差金を授受することを目的とする行為は「相場による賭博行為」として禁止されています(商品先物取引法329条)。

【質問3】電気事業を手がけるに当たり、質問1の先物取引以外にデリバティブ取引規制に関わるものはあるのでしょうか。

【回答3】はい、あります。その1つとして、連系線利用に伴う間接オークション方式の下でのエリアを超えた電気の売買における差金決済の合意がデリバティブ取引に当たる可能性があります。

 連系線利用ルールの見直しに伴い、これまでの「先着優先」に代わって、間接オークション方式を使うことになりました。連系線を利用して電力の売買を行う事業者は、JEPXのスポット市場において取引を成立させることが必要となります。

 スポット市場の価格変動リスクの回避するため、売買当事者(連系線を利用して電力を売買する事業者)は、あらかじめ当事者同士で決めた固定価格(約定価格)とJEPXの市場価格との差額を補てんすることに合意したうえで、取引することになるでしょう。

 この方法が、デリバティブ取引の対象である「差金決済契約の合意」に当たるのかどうかが、議論の俎上に上っています。もう少し具体的に言うと、商品先物取引法における「店頭デリバティブ取引」に該当するのかどうかという論点です。

 店頭デリバティブ取引にはいくつかの類型がありますが、そのうちの1つが、約定価格と実際の取引価格に差額が生じた場合に、金銭を授受する取引、またはこれに類似する取引です。店頭デリバティブに該当する場合は、取引するためには商品先物取引業の許可が必要になるなど、規制が適用されるおそれがあります。