【質問5】SPCの出資持分を取得する方法でFIT権利の譲渡を受ける場合、買い主として何を注意すべきでしょうか。

【回答5】SPCの出資持分を取得する方法であれば、事業譲渡と比較して、契約相手からの承諾取得や再エネ事業計画の変更認定にかかわる経済産業大臣の認定取得を省くことができます。

 他方、SPC自体を買収することになりますので、再エネ発電事業に関するプロジェクト・デューデリジェンスとは別に、SPCについてのコーポレート・デューデリジェンスが必要になります。SPCに隠れた債務がないかどうかを確認することが欠かせません。

 デューデリジェンスでは、特定の再エネ発電プロジェクトに特化したSPCとして設立・利用され、無関係の債務を負担していないか、役員に関する報酬の取り決めは適切か、従業員が存在していないかなどを確認します。

【質問6】今後、稼働後案件の売買(セカンダリー取引)が活発になると言われるのはなぜなのですか。

【回答6】再エネプロジェクトへの投資に意欲のある投資家であっても、リスクの許容度は一様ではありません。完工・運転開始に至るまでのリスクを許容できない投資家もいます。セカンダリー取引が活発になり市場が形成されれば、運転開始後のプロジェクトにしか投資できない投資家も、再エネ発電事業へ参入することが可能となります。

 一方、プロジェクトの開発段階から関与した投資家は、セカンダリー取引により、投下資本を早期に回収し、次の新規開発プロジェクトへと資金を投入することが可能となります。セカンダリー市場の発展は、再エネの導入拡大に不可欠と言えるでしょう。マーケットの健全な拡大が期待されます。

* 本稿は執筆者の個人的見解であり、その所属する法律事務所又はクライアントの見解ではありません。

川本 周(かわもと・あまね)
西村あさひ法律事務所・弁護士
2006年弁護士登録。西村ときわ法律事務所(現西村あさひ法律事務所)入所。電力ガス・プラクティスチーム所属。2013年から2年間、日系商社のロンドン子会社にて発電プロジェクトに従事。業務分野はプロジェクトファイナンス、証券化/流動化、電気・ガス事業など。

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