【質問4】FIT権利の譲渡方法について教えてください。

【回答4】前述のとおり、FIT権利という単一の権利があるわけではありません。FIT認定における地位や接続契約上の地位を総称したものであると考えられます。

 このため、FIT権利の譲受人がFITによって売電を実施するためには、土地利用権の譲渡も必要です。それ以外にも、発電設備の工事請負契約などの関連契約が締結されていれば、それらの契約上の地位の譲渡も必要です。

 FIT権利の譲渡は、設備や土地などの資産や、工事請負契約などの契約関係と切り離して譲渡されても意味がありません。譲渡人は、これらを一体として譲り渡し、譲受人がこれらを一体として譲り受ける必要があります。法的には、個別の発電プロジェクトに係る一切の財産や契約関係を譲渡するもの、すなわち「事業の譲渡」と整理するのが良いでしょう。

 FIT法によると、認定の対象となった「再生可能エネルギー発電事業計画書」に記した事業の譲渡があったときは、再エネ事業計画の変更について認定を申請する必要があります。改正前FIT法の設備認定では、FIT権利の譲渡については「軽微変更」として届出だけで済みました。ですが、改正FIT法では、権利譲渡の際には改めて認定を受ける必要がありますので注意が必要です。

 接続契約や、その他の関連契約上の地位を譲渡するには、契約相手の承諾が必要です。土地利用権が所有権や地上権であれば、これを第三者に譲渡することになりますが、賃借権を譲渡する場合は地権者の承諾が必要になります。

 このように、事業譲渡の場合、関連する資産や契約関係が再エネ発電事業として一括譲渡することになります。ただし、個々の資産や契約関係を譲渡することに変わりはないため、土地賃貸人や関連契約の相手方当事者の承諾が必要となります。

 この手続きは煩雑です。そこで、再エネ発電事業ごとに特別目的会社(SPC)を設立し、SPCがFIT認定を取得する方法が多用されています。FIT権利の売却に際して、SPCの出資持分を譲渡する方法を取るケースが多くなっています。