【質問2】そのルールによってガスが調達できるのは、どういったケースですか。

【回答2】大手事業者に対して、ガス小売事業者への卸供給がルール上求められるのは、「他にガスの調達手段がない場合」です。具体的な内容は、公正取引委員会と経済産業省が2017年2月に策定した「適正なガス取引についての指針」に記されています。

 「他にガスの調達手段がない場合」に、卸売事業者(大手事業者)が不当に卸供給を拒絶したり、卸供給量の制限や卸供給料金を高く設定することで、卸供給を受けることを断念せざるを得なくする行為によって、ガス小売事業者の事業活動が困難になるおそれがある場合には、独占禁止法に違反(私的独占、取引拒絶など)する可能性があるとされています。

 ただ、特定の卸売事業者以外にガス調達の選択肢がないケースというのは、必ずしも多くはないでしょう。物理的に、あるいは事実上、隣接のエリアから分断されていることなどにより、あるエリアにおいて卸供給能力を持つのが実質的に特定の大手事業者のみであるような場合には、卸供給の「不当」な拒絶が問題となります。

 そうなると今度は、「不当」の意味が重要になってきます。これは、「供給余力の不足など、正当な理由がない場合」と読み替えることができます。

 では、供給余力の有無はどう判定するのでしょうか。自社の小売需要の規模や調達状況に応じて個別に判断することになりますが、旧一般ガス事業者に対して「供給余力がない」と認められるケースは現時点では多くないと考えられます。旧一般ガス事業者は全面自由化以前には、そのエリアにおいて、家庭などの小口需要に独占的に都市ガスを供給していました。自由化以前と同等の調達量を維持している場合、供給余力がないという理由だけで新規参入者との協議に応じないと、「不当」に該当するおそれがあると考えられます。

 このほか、卸供給を断る正当な理由となりうるのは、卸供給条件に関する合意が成立しないことです。大手事業者が提示した供給条件が、資本関係のない新規参入者と社内取引やグループ内取引で異なるケースでは、①供給量、②供給期間、③信用力などに照らして合理的かつ客観的な理由をもって説明する必要があります。この際、③信用力の点などを過度に強調し、新規参入者がおよそ応諾困難な条件を提示することは問題になるおそれがあります。