情報の公開と活用が市場を育てる

 我々としてはできる限りの情報を集めて、今回の新たな市場活性化イニシャティブの効果を検証していきたい。

 その一例が以下のようなデータの整理だ。これらはJEPXのスポット市場における売り入札量や買い入札量、約定量、おび1時間前市場の約定量を2016年度と2017年度にかけて日々集計したものだ。

 スポット市場での売り入札量は昨年度の水準と大きく変わらないものの、買い入札量は昨年同時期水準の2倍近くに増加している。約定量に至ってはグロスビディングの成果もあり、直近では昨年の4倍近くに膨れ上がっている。

スポット市場での売り入札量は昨年度の水準と大きく変わらない
スポット市場での売り入札量は昨年度の水準と大きく変わらない
スポット売り入札量
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スポット市場での買い入札量は昨年同時期水準の2倍近くに増加
スポット市場での買い入札量は昨年同時期水準の2倍近くに増加
スポット買い入札量
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 一方で、今回の市場活性化イニシャティブで最も注視すべき1時間前市場の情報公開は遅れている。

 1時間前市場は約定量の水準はこれまでのところ昨年と大きく変わらないが、今後は新ルールに沿って売り入札が増えてくる可能性がある。にもかかわらず、スポット市場と違って、売り入札量や買い入札量に関する情報は公開されていない。

 卸電力市場の取引動向は電気料金に大きく影響する。当局には、市場参加者や需要家、さらには国民目線に立って積極的な情報公開を望みたい。

スポット市場での約定量は直近では昨年の4倍近くに増加
スポット市場での約定量は直近では昨年の4倍近くに増加
スポット約定量
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1時間前市場はスポット市場に比べて約定量が圧倒的に少ない
1時間前市場はスポット市場に比べて約定量が圧倒的に少ない
1時間前市場の約定量
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 当局も含めた市場関係者がタイムリーにこうした整理を行うことで、市場で起きていることへの共通認識や情報交換が進めば、本来の市場形成に資すると考える。金融市場などでは、市場運営を担う当局が意識すべき姿勢として、「市場との対話(Dialogue with market)」という用語が確立している。その意味や意義について、政策当局にとどまらず広く電力市場関係者は是非関心を持ってもらいたい。

 ちなみに、11月に取り組みが始まってから2週間たった段階で、今回のイニシャティブの趣旨を汲んだ取り組みが、既に東エリアでは始まっているという評価を新電力の現場担当者から聞いた。一方で、西エリアの動きは全く鈍いという。監視等委員会の奮起を期待したい。