いずれの報告や資料も、それまでの自主的取組を自画自賛し、全面自由化後も継続する意思表明となっていた。だから、市場参加者の多くはそれまでと同様な取り組みの継続を期待したし、新たに参入する新電力も彼らの発言を心強く聞いたに違いない。

 だが、実際に市場で起きたことは、夏場に向けた昼間やピーク時間帯における驚くべき供給力不足であった。このあたりの経緯は、「電力市場で本当に“サボって”いたのは誰か」を参照されたい。

 簡単に振り返る。供給力不足の原因は市場関係者を驚かせるものだった。

 2016年6月17日、第8回制度設計専門会合で監視委員会は、全面自由化後は送配電部門が確保することになった「調整力」とは別に、一部の大手電力の小売部門が、送配電部門の調整力と同レベルの大きな「予備力」を抱え込んでいた実態を公表した。これは、日経エネルギーNextが「東京電力エナジーパートナー(EP)の『予備力二重確保』問題」として報じている。

“自主性”がもたらした1年半の混乱

 市場で供給力が不足しているのはJEPXが公表している数値を丁寧に追っていけばわかる。そうはいっても、つい数カ月前まで行われていた自主的取組が、全面自由化の前月にも継続すると宣言されていたにもかかわらず、まさか機能不全に陥っていたのはまったくの想定外であった。

 さらに大きな問題は、監視委員会の公表後も直ちに改善されなかったことだ。

 公表から半年を経た2016年12月の第14回制度設計専門会合でも、改善が見られない大手電力の小売部門に対して監視委員会から改善依頼を行ったとの報告があっただけだ。

 さらに、2017年7月の第20回制度設計専門会合においても、まだ二重確保が継続していたことが明らかになるという有様だ。

 そして、予備力二重確保問題の裏で、電力需給当日の余剰インバランス問題も発生していた(「東電PG、インバランス収支409億円赤字の衝撃」参照)。

 結局のところ、東電EPは今日まで何の釈明もしていない。公の会合で釈明に当たったのは、今年の9月に過剰予備力が新たに発覚した中部電力と関西電力だった(「中部電や関電も、過剰な電源抱え込みにメス」参照)。

 このような一連の流れを、金融市場関係者や海外の電気事業者が見聞きしたらどう感じるだろうか。

 全面自由化以降の1年半もの間、およそ市場活性化とかけ離れた自主的取組のおかげで、従来の自主的取組は大いに後退したと感じている。

 今回は規制当局があるべき方向性に舵を切った大きな変革だ。「自主的取組」ではなく、本来の「市場活性化イニシャティブ」であるべきだ。これまでのような“自主性”に委ねてはいけない。変革が単なる形式にとどまらず、内実が伴ったものであることを切に願ってやまない。