電源の稼働機会を市場価格との関係で探ってみよう。以下に出てくる複数のグラフはいずれも、ある電源の限界費用(1kWhを発電することにかかる費用)の水準と、想定される電力価格の将来水準(カーブ)を重ねたものだ。
グラフ1は電源の限界費用が比較的高いケース(12円/kWh)を想定した。この場合、緑の背景色で示された範囲で市場価格が限界費用を上回る。
燃料費が安い電源のkW価値は高い
電力の市場価格より発電の限界費用が安い場合(時間帯)は、この電源を稼働させて、電力需要に応じるのが合理的な行為となる(市場で調達するより発電する方が競争力は高い)。市場価格が限界費用を上回った市場価格の積分値(グラフで囲まれた面積の合計)が、当該電源が将来発電して生み出しうる経済的価値であり、kW価値と等価になる。
さて、こうした手法で電源のkW価値を評価できるとすると、より限界費用が安い電源の場合、その価値がどうなるのかを見てみよう。グラフ2は限界費用が標準ケース(10円/kWh)、グラフ3は限界費用が標準より安いケース(8円/kWh)を表している。
それぞれ限界費用を示すオレンジの直線が下がった分、グラフ1よりグラフ2のケースの方が、グラフ2よりグラフ3のケースの方が、電源を稼働させる機会が増加したり、稼働時間が長くなったりすることが読み取れる。
つまり、限界費用が小さい電源ほど、市場価格に勝てる時間が長くなり、kW価値が高まる。
もう少しこのアプローチの意義を考えてみたい。グラフ1のケースで、緑の市場価格のカーブを1円/kWh上昇させてみた(グラフ4)。
すると赤丸で囲まれた分だけ電源の稼働機会が増え、kW価値を示す面積も増加した。市場価格の水準が高くなったことで、相対的に価値が低かった電源のkW価値が増大したことになる。つまり、限界費用と市場価格の相対的な位置取り(乖離状況)によって、kW価値は変動する。
もう1つ、重要な視点がある。それは市場価格の変動性(ボラティリティ)だ。
標準的な限界費用を想定したグラフ2の電源の場合で、市場価格の変動が小さいケースを考えたのがグラフ5だ。市場価格の変動が小さくなると、丸で囲まれた面積(kW価値)が小さくなる。つまり、電源が市場と共存する際の経済的期待値が小さくなり、相対的なkW価値が低下することが分かる。市場価格の変動性もkW価値の大きさを決める要因だ。