需要減少は震災以降定着した節電や省エネといった国民的なエネルギー消費行動の変化ばかりでない。人口減少や産業構造の変化といった構造的な変化を見逃してはいけない。震災後の一時的な電力不足は既に過去の出来事である。むしろ今後は、電力供給力の過剰がもたらす課題をいかに乗り切るかを真剣に考えるステージにある。

市場価格とインバランス価格の奇妙な関係

 そこで、今夏の電力価格の水準を改めて確認したい。グラフ2は電力市場における東京エリア価格と同エリアのインバランス価格(*1)の推移を30分コマ単位で示している。また、問題点をハイライトするために13時から16時のピーク時間帯に絞った。

*1:インバランス価格とは、小売事業者や発電事業者の計画値に対して、前日のスポット市場や当日の1時間前市場で調整しきれなかった需給の過不足を最終的に埋め合わせるために、当該エリアの一般送配電事業者が提示する過不足の売買価格。

今夏、東京インバランス価格は市場価格を大きく下回った
今夏、東京インバランス価格は市場価格を大きく下回った
グラフ2●東京エリア価格と東京インバランス価格の推移[13-16時]
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 このグラフを見ると、本年6月中旬から8月上旬まで、東京インバランス価格(オレンジ)が同エリアの市場価格(ブルー)を大きく下回る日が多いことがわかる(*2)。

*2:グラフ2にはインバランス価格を計算する際に利用されるα値も掲載している(α値を巡る問題に関する詳細は「電力市場で本当に“サボって”いたのは誰か」参照)。6月中旬から8月上旬にかけて、α値が「1」を下回る日が頻出している。

 グラフ3に、関西エリアの市場価格と関西インバランス価格の比較を示す。

関西インバランス価格と市場価格とのかい離は東京エリアより小さい
関西インバランス価格と市場価格とのかい離は東京エリアより小さい
グラフ3●関西エリア価格と関西インバランス価格の推移(13-16時)
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 関西でもインバランス価格が同エリアの市場価格を下回るケースは見られるものの、その頻度は東京に比べてかなり少ない。関西エリアの場合はよりエリアの市場価格とインバランス価格の水準が近いことがわかる。

 グラフ4は、当該予備力予想と東京ピーク時間帯(13時~16時)の価格との関係を、2017年4月から6月中旬までと、6月中旬から8月末までを色分けして示した。グラフ5は関西における同様のグラフである。

東京エリアは夏(6月中旬~8月末)、全国の予備力量に関係なく価格が乱高下
東京エリアは夏(6月中旬~8月末)、全国の予備力量に関係なく価格が乱高下
グラフ4●全国予備力と東京ピーク時(13~16時)平均価格
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関西エリアは春から夏にかけて比較的価格は安定していた
関西エリアは春から夏にかけて比較的価格は安定していた
グラフ5●全国予備力と関西ピーク時(13~16時)平均価格
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 2つのグラフを比較すると、全国予備力の変化に対して市場価格がより安定的に推移していたのは関西エリアであることがわかる。