さらに、同様の比較をインバランス価格で行ってみた。
市場化は低成長下で経済効率を維持する方法
グラフ6と7の2つのグラフを見比べると、東京、関西のいずれも全国予備力の変化に対してインバランス価格は安定的に推移している。
その意味するところを考えてみると、今夏の本来の全国的な電力需給を反映した価格は、東京エリア価格よりは関西エリア価格であり、市場価格よりはインバランス価格の方ではないか。
市場設計の観点から、前日のスポット市場においては、需給ひっ迫時には高値になり、需給緩和時には安値になるはずだ。適正な電力価格が決まるのはスポット市場であるべきなのである。その後は当日のゲートクローズ(*3)に向けて、個別の事業者がスポット市場までに手当てした電力の過不足を1時間前市場を通じて調整し、ゲートクローズ後に一般送配電事業者による最終的な需給調整が行われる。
この仕組みが本来の設計通りに機能していれば、本当に電力が不足している際には、1時間前市場、一般送配電事業者による最終需給調整と実需給に近づくにつれて、電力の価格が高くなっていくのが自然な姿だ。
しかし、今夏においてはスポット価格が高値であったにもかかわらず、当日は供給力が十分に余っていて、インバランス価格が低位安定する現象が常態化した。つまり、当日のインバランス価格の方が電力需給の実態をより正確に反映していたことになる。
社会が効率的に資源配賦を行うにあたっては、競争的な市場機能を利用すると考えるのが経済理論の第一歩だ。その反対の極が制度による資源配賦になる。
日本の場合、かつての高度経済成長を支えるに当たって、その基盤となる電力などのエネルギーや通信(電話)、資金供給(金融)などおいては、人為的な資源配賦政策が成果を上げた時代があった。
しかし、低成長経済に入り、電力需要も逓減する中にあっては、競争を通じてより効率的な資源配賦を行う必要が生じる。継続的な経済成長の前提が崩れれば、人為的な資源配賦は非効率を生むことになるためだ。これが、世界各国でエネルギーなどの公共分野においても自由化や市場化が採用される理由である。