電力市場における取引を監視する電力・ガス取引監視等委員会が、“市場の歪み”に関する調査開始を宣言した。「ようやく」の感は否めないが、7月の価格高騰で目が覚めたようだ。市場関係者は常日ごろから市場の価格シグナルに目を凝らし、背後に潜む異変に敏感でなくてはならない。

 ようやく、規制当局が“問題”に向き合ってくれそうだ。7月28日に開かれた電力・ガス取引監視等委員会における有識者会議(制度設計専門会合)に参加しての印象である。

 そこでは、「(前日の)取引所の需給がタイトな時間帯でも、当日は余剰インバランスが発生している」ことが明確に問題提起され、監視委員会は関連事業者への聞き取りなどを含めて、その原因について調査に乗り出すと明言した。

異常だった7月の電力市場

 日本卸電力取引所(JEPX)の7月のスポット市場は、これまでにない様相を見せた。東エリア主導で連日高値を追う展開となり、7月19日渡しは45.81円/kWhという異常な高値が30分コマで10コマにもわたって出現した。

 1日の値幅(最高値と最低値)を1本の棒グラフとして、2017年4月から7月末まで並べてその変化を見てみると、6月中旬から7月中旬にかけて日々高値を追った様子がよくわかる(グラフ1)。

6月中旬から7月中旬にかけて高値を負う展開に
6月中旬から7月中旬にかけて高値を負う展開に
グラフ1●東京エリアプライスの1日の値幅の変化(出所:日経エネルギーNext電力研究会)
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 東京エリアプライスが牽引する形で、全国システムプライスも上昇した。システムプライスの1日平均をプロットしたのがグラフ2である。過去5年と比べても、この6月中旬からの価格上昇は異例のスピードだったことがわかる。市場参加者はこの事態に大いに当惑したに違いない。

今夏の価格上昇は異例
今夏の価格上昇は異例
グラフ2●システムプライスの推移(出所:日経エネルギーNext電力研究会)
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