インバランス価格が示唆する取引所と需給実態のズレ
不思議なのは、電力価格がこれだけ高騰したにもかかわらず、同じ時間帯のインバランス価格はそれほど高値にはならないことだ。
インバランス価格とは、電力の需給に関する事前の計画を電気事業者に守らせるインセンティブとして、計画値とのかい離分にかけられるペナルティー料金をいう。時間帯ごとに事後的に検証する全国的な需給状況を反映させて算出する仕組みになっている。
もし、取引市場における需給のひっ迫が、全国的な需給のひっ迫を反映したものなら、電力価格が高値の時間帯ではインバランス価格も高くなるはずなのだ。
そうはなっていないということは、卸電力市場で需給がタイトであっても、実際には全国的に予備力(想定外の需要増や発電・送電設備の事故に備えて待機させている電源)が相応に余っていて、実際に発電していたというのが実態だと考えられるのではないか。つまり、取引市場における需給と実態的な需給の間に大きなズレが生じていることを意味している。
大手電力が自社の販売量の減少から停止火力を増やすことで、本当は電源が余っているにもかかわらず市場価格は高くなる。健全な市場育成の観点から、これは看過できない問題なのではないか。今の状況を放置すれば、需給がタイトになる夏場には再び電力価格が高騰する恐れがある。
大手電力に偏在している国内の発電設備が有効に使われない結果、取引市場における需給がひっ迫し、電力価格が上昇するとしたら、発電や小売りの競争が阻害され、最終的には電力の需要家が自由化の果実を享受できなくなる恐れが出てくる。
市場活性化の観点からも監視委員会は大手電力に対して、余剰電源の市場拠出を強く促すべきだろう。