まずは中小企業向けの営業でKDDIとシナジーを

――KDDIとのビジネス面でのシナジーは。

小林昌宏・エナリス社長(撮影:的野弘路)
小林昌宏・エナリス社長(撮影:的野弘路)

 小林社長 営業チャネルの拡充から、シナジーを生み出していきます。1月末から徐々に開始しているのですが、KDDIとエナリスとで三社契約モデルで提携しています。「auでんき」を関西電力とKDDIで売っているのと近い形態です。フロントにはKDDIの営業部隊、お客様との電気の契約はエナリスという形態です。KDDIが携帯電話基地局を設置しているビルなどから、営業をスタートさせています。

 エナリスがビジネスを始めた頃は新電力のトップランナーでしたから、競合を意識することは少なかった。営業に行けばお話を聞いていただけて、ご理解頂ければ契約が取れるという状況でした。少ない人数でも営業活動ができたわけです。

 ですが、エナリス・ショックから2年間が過ぎた今となっては、競合企業が山ほどいます。新電力の数は急増し、強力な電源を保有している大手電力会社とも競合します。営業の手が足りないのが実情です。ここでKDDIとタッグを組んでいきます。

――KDDIは、携帯電話サービスを中核とした「au経済圏」のビジネスモデルを推進しています。エナリスとの協業とau経済圏の関係は。

小林 別の話です。au経済圏は主にコンシューマー・ビジネスです。「auでんき」の場合、エナリスはKDDIに電力を卸したり需給管理を受託するという立場で、エンドユーザーとの接点はありません。au経済圏と、今取り組んでいる法人向けの戦略は独立しています。

 実は、「auでんき」は法人向けにも販売しています。ただ、競争力に乏しく、ほとんど動きがありませんでした。今回もエナリスはKDDIの電気として法人向けに販売します。

――エナリスの強みを生かした次なる展開は。

小林社長 需給管理業務の周辺にエナリスの一番の強みがあります。当社は自ら選択したわけではありませんが、電源を持たない事業者になりつつあります。電力システム改革によって事業構造は変わっていきます。新しい社会に適用する機能を早く開発して、「需給管理」という言葉にとどまらず、新しい価値をメニュー化していきたい。

 その1つが「でんきがプラスワン」という新電力支援サービスです。名前は気に入っていないのですが・・・(笑)。ざっくりいうと、色々な業種の企業が「電気をメニューにプラスしたいな」という時に必要なことをすべて請け負います。

 コンシューマー向けのビジネスをやっている企業は顧客接点を持っています。こういった企業こそが、新電力マーケットを拡大する原動力になるはず。ここをお手伝いしていきたい。電気事業に関心はないけれど、自社商材と電気を一緒に売れたら良いよね、という企業も潜在的にはたくさんいます。

 例えば、不動産仲介業が分かりやすい。住宅の賃貸契約をしたときに、電気料金があらかじめ含まれているとします。電気料金が他の商材に含まれた「内蔵型の料金モデル」です。電気料金だけの勝負ではないところに面白さがあります。

 自ら新電力として電気を供給しようとしている事業者への支援もできますし、これまで電気には関心のなかった法人向けに「電気はうちが供給するからやってみませんか」という展開も可能です。チャネルの無駄もありません。

 今後は、仮想発電所(バーチャルパワープラント、VPP)のコントロールや、需給管理の機能も提供します。これまで新電力は自ら顧客管理システム(CIS)に投資して、需給管理システムにも投資してきました。ただ、さらなる機能追加に投資するのは難しいと考えている新電力もいるはず。もともとはエナリスに需給管理を委託していたけれど、「費用がかかるから」と出て行かれた企業がもう1度、話を聞いてくれるケースもあります。

 B2B2Xのビジネスモデルです。いまはB2Bで、その先のお客様のビジネスにはかかわっていません。今後は、その先のお客様のところまでサポートさせていただきたいと思っています。「一緒にサービスを作りませんか?」と。B2B2Xの真ん中のBの企業が、電気について考えられないケースが、マーケットにはゴロゴロあるだろうと思うのです。