東京電力エナジーパートナー(EP)と日本瓦斯(ニチガス)が、都市ガス参入支援を専業とする東京エナジーアライアンスを設立してから4カ月。参加第1号に名乗りを上げたのは老舗新電力のイーレックスだった。東電EP・ニチガス連合は第三者を巻き込んで広がるのか。可能性と課題を探った。

 小売電気事業者のイーレックスが、2018年4月をメドに都市ガス小売り事業に参入する。電気事業専業の新電力が都市ガス参入を表明したのはこれが初めてになる。

 イーレックスは電力の部分自由化が始まった初期のころから電力小売りを続けている老舗新電力である。

 同社が都市ガス参入でターゲットとしているのは小口の家庭部門だ。「都市ガス全面自由化以降、家庭部門では電力とガスの両大手が電力・ガスセット販売でしのぎを削っている。セット販売は自由化が進んだ地域では世界的な流れだ。(セット販売で)顧客の利便性を高めていかないと、本業の電気事業を守るのも厳しくなる可能性がある」。イーレックス幹部は都市ガス参入の目的に競争環境の変化を挙げる。

 イーレックスの都市ガス参入は、東京電力エナジーパートナー(EP)と日本瓦斯(ニチガス)が8月に折半出資で設立した新会社、東京エナジーアライアンス(東京都中央区)との提携第1号としても注目される。

 東京エナジーアライアンスは都市ガス事業で必要になる事業プラットフォームを提供する、全国でも他に例を見ない都市ガス参入支援サービス事業者だ。

 都市ガス事業への異業種からの参入は容易ではない。新規参入者にとって大きなハードルとなっている「ガスの調達」と「保安業務」を、東京エナジーアライアンスがワンストップでサポートする。同社がサービスを提供する関東エリアなら、都市ガス事業の経験やノウハウをまったく持たない事業者でも都市ガス事業への参入が可能になる。

「ワンタッチ供給」で同時同量も不要

 第1のハードルである「ガスの調達」からみていこう。都市ガスには卸電力取引所のようなオープンな取引市場は存在しない。都市ガスの供給元はエリアにLNG(液化天然ガス)基地を保有する大手都市ガスか大手電力に限られる。関東エリアであれば、東京電力グループと東京ガスの2社だ。新規参入者はいずれかから卸供給を受ける必要があるが、既存の中小都市ガス以外との取引実績はゼロに近い。

 今回、イーレックスは東京エナジーアライアンスの枠組みを通して、「ワンタッチ供給」と呼ばれる形態で東電EPから都市ガスの卸供給を受ける。

 ワンタッチ供給とは都市ガス全面自由化の際に認められた都市ガス独自の卸供給の手法だ。ガス小売事業者が家庭などの需要場所で卸事業者から卸供給を受け、その場で小売りをしたと見なす。

 本来、ガス小売事業者は安全確保の観点から導管圧力を一定範囲内に収めるため、事業者単位で1時間あたりのガスの注入量(供給量)と払い出し量(需要量)をバランスさせる「同時同量」が義務づけられている。

 ワンタッチ供給の場合、実態として卸元が同時同量まで行うことになるため、ガス小売事業者のイーレックスはガスのペレーションをしないで済む。都市ガス事業の経験がない事業者の参入を容易にする卸供給法だ。

 都市ガスの「卸供給」や「同時同量」のほか、ガス導管事業者である東京ガスとの託送手続きも、東京エナジーアライアンスが窓口となり東電EPが代行する。