保安や同時同量も基本は自前で

 ガスパルの都市ガス販売は、新電力事業との関わり以外にも、注目すべき点がある。というのも都市ガス販売の参入障壁は思いのほか高いのだ。

 まず、都市ガスの調達の難しさがある。ガスパルが提供する東京ガスエリアで、都市ガスの卸販売を手がける事業者は、LPガス事業者への卸供給を明らかにしている東京ガスや、ニチガスと提携する東京電力エナジーパートナー(EP)など、数社に限られる。

 ガスパルは、「都市ガスの卸元については非公開」としているが、東電EPとニチガスが折半出資した東京エナジーアライアンスではないとみられる。

 というのも、ガスパルはガス小売事業者に求められる同時同量や需要家のガス機器の保安業務を、「LPガス事業のノウハウを活かし、基本的には自前で賄う」(ガスパル)としているためだ。東京エナジーアライアンスは、都市ガスの卸販売のほか、同時同量や保安を請け負うことを強みにしている。

 ある業界関係者は、「ニチガスと厳しい競合関係にあるLPガス事業者や都市ガス事業者に、都市ガスに参入するからといって東京エナジーアライアンスと組む選択肢はないだろう」とみる。この点に関しては、複数の関係者が同意するところだ。

 ガスパルは「東京ガスよりも一律3%安くする」という。基本料金、従量料金とも、東京ガスの3%引きに設定している。「賃貸物件の入居者を対象としているため、営業コストがかからないのが強み。その分を値引きに回す」(ガスパル)という考え方だ。

 大東エナジーの「いい部屋でんき」も同様の営業戦略で、ごく短期間に26万もの契約を獲得し、低圧部門での電力販売量でトップ10に躍り出た。同様の営業戦略を取るガスパルの都市ガス販売も、電気事業の縮小でマイナスイメージを持った入居者を除けば、効率的に契約数を伸ばす可能性はある。

 ただ、別会社とはいえ、電気事業の需要家は突然の契約切り替え要請を受け、不安と混乱の中にある。大東建託グループには、ガス販売の拡大よりも前に、まずは電力の顧客のサポートに力を注いでもらいたい。