電気料金に関する説明はない

 エネチェンジの有田社長は、「大東エナジーのレターには、もう1つ問題がある」と指摘する。それが、電気料金の上昇だ。

 「需要家は、大手電力から大東エナジーに契約を切り替えたことで、5%ほど電気料金が安くなっている。これを再び大手電力に戻すということは、電気料金の値上げを意味する。その点について、一切の説明がないまま、大手電力に戻そうとしている。需要家の不利益は大きい」(有田社長)。

 大手電力以外にも、電気の契約先には選択肢があるが、大東エナジーの需要家には伝わらない。そこで、エネチェンジは12月12日、「大東エナジー契約者救済キャンペーン」を発表。大東エナジーの需要家に対して、エネチェンジの比較サイト上で7社のパートナー企業への切り替え手続きができるようにした。

 パートナー企業には、東京電力エナジーパートナー、東京ガス、Looop(東京都文京区)、昭和シェル石油、新出光(福岡市)、ネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ヶ根市)、奈良電力(奈良県奈良市)が名を連ねる。

 実は、エネチェンジの比較サイトは、大手電力会社から新電力への切り替えに主眼をおいており、新電力から新電力への切り替えは、そのままでは実施できなかった。そこで、すぐさまシステムを追加開発し、7社のパートナー企業への切り替えをサイト上でできるようにした。

 パートナー企業の選定は、「エリアごとに特徴が分かりやすい新電力を3社を目安に揃えたいと考えて声をかけた」(有田社長)という。

 例えば、東京電力エリアの場合、基本料金ゼロのLooop、ドライバー向けプランの昭和シェル石油、排出係数ゼロのネクストエナジー・アンド・リソース(Greena)、加えて100万件の契約数を誇る東京ガスとなっている。実質1週間ほどの準備期間しかなかったため、すぐに意思決定してもらえる企業であることも重要だった。

 エネチェンジには、大東エナジーの需要家を取り込みたい新電力から、多数引き合いがあるという。ただ、どこまで大東エナジー向けの対応を続けるかは不透明だ。

 というのも、エネチェンジのビジネスモデルにおいて、比較サイトはあくまでブランディングのための事業で、収益の柱は小売電気事業者向けのデータ解析にある。「困っている需要家が目の前に大量に現れたので、反射神経的に短期間で費用を投じて体制を整えた。だが、どこまで受け皿としての体制強化をできるか分からない。だから、大東エナジーと連携したかったのですが・・・」と有田社長は顔をしかめた。

 大東エナジーは日経エネルギーNextの取材に対しても、「ホームページに掲載している以上の質問には、一切回答できない」としている。こうしている間にも、大東エナジーが提示した切り替え期日は迫ってくる。

 監視委員会は、「今回の切り替えは、あくまで大東エナジーの都合だ。最後の1件が切り替えを終えるまで、きちんとフォローするように口を酸っぱくして伝えた」(取引監視課)という。26万の需要家がスムーズに契約の切り替えを進められるよう、情報提供するのは小売電気事業者としての責任だ。大東エナジーには誠意ある対応を求めたい。