高浜原子力発電所が再稼働してからの、関西電力の値引き攻勢は凄まじい――。こう耳にすることは少なくなかった。ただ、値引き競争の主戦場は高圧部門。法人顧客を相手にした相対契約であるがゆえに、その実態は見えにくい。

 日経BP総研 クリーンテック研究所が運営する小売電気事業者の会員組織「日経エネルギーNextビジネス会議」 が10月13日に開催した定例会議でも、関電を筆頭とした大手電力各社の値引きが大きな話題となった。

小売電気事業者47社が参加した
小売電気事業者47社が参加した
「日経エネルギーNextビジネス会議」第3回定例会合の様子

 3回目となる今回の会合には、小売電気事業者47社、78人が参加。複数の小売電気事業者が営業現場での実態を赤裸々に語った。大手電力の各地での営業状況を踏まえた意見交換を行ったが、関電の営業攻勢に特に多くの意見が寄せられた。

 なかには、「10%、20%、30%値引きも珍しくない。最近では39%引きで顧客を関西電力に奪われてしまった」「低負荷、高負荷とも価格では勝てない」など、悲鳴にも近い、苦境を吐露する小売電気事業者もいた。

関電社長名のレターに“グレーに見える文言”が

 会合では、関電が今年7月に岩根茂樹社長名で高圧の需要家に送付した「電気料金の値下げについて」というレターにも話題が及んだ。

 このレターは、高浜原発の再稼働に伴い、8月1日から電気料金を値下げすることを需要家に伝えるものだ。岩根社長名のレターのほか、「電気料金値下げに伴う電気需給契約のご案内」「ご契約に関する重要事項について」といった文書、さらに「関電ガス」についての案内なども同封されていた。

 小売電気事業者各社が問題視しているのは、「ご契約に関する重要事項について」という文書だ。「独占禁止法上、あまりにグレーに見える」(新電力幹部)文言がある。それが、「15 需給契約の廃止」だ。

  • お客様が電気の使用を廃止しようとする場合は、あらかじめ廃止期日を定めて関電に通知する。
  • ただし、廃止を希望する理由が他の小売電気事業者への切り替えである場合は、終了希望日の3カ月前までに、お客様が希望する料金等の需給条件を関電に提示する。
  • 関電がお客様の希望条件提示から20日後までに、お客様が希望する条件を提示できない場合は、終了希望日に契約を終了する。

 新電力が関電から顧客を奪おうとした場合、その顧客は新電力が提示した料金などを基に関電に希望条件を通知する。関電は新電力の提案に対して対抗措置を取り、顧客が関電の提案に納得しなかった場合は契約が終了。新電力への切り替えが成立する。