同市場への期待は高い。安価な電力調達の可能性について尋ねたところ、有効回答(48人)のうち60%(29人)が「期待している」と答えた。「期待していない」(12.5%、6人)、「どちらとも言えない」(15%、7人)、「わからない」(12.5%、6人)を大きく上回った。

 ベースロード電源は24時間、ほぼ一定の出力で稼働させる必要があるものの、発電コストは安い。だが、建設費が高く、立地確保や運用のハードルが高いため、新電力が新たに建設するのは容易ではない。事実、ベースロード電源のほとんどは大手電力が独占事業体として建設したもので、経済産業省は新市場の立ち上げによって公平な競争環境の整備を目指すとしている。これまで、ベースロード電源の有無が、大手と新電力の競争力の差を生む大きな要因とされてきただけに、新電力の期待の高さは当然と言えるだろう。

 ただ、一部の新電力の中からは楽観を戒める声も聞かれた。「本当に安い電源にアクセスできるのか不明」「(新電力の)購入可能量が少なければ、恩恵は限定的」といった疑問のほか、「現行の卸電力市場の監視も十分ではないように見えるのに、果たして新市場が公正さを保てるのか」といった不安だ。新電力としても、今後の制度設計や市場監視を注視する姿勢は欠かせないだろう。

 ベースロード電源への期待の高さとは対照的に、容量市場に対してはイメージを持ちきれていない実態が浮かび上がった。容量市場の創設に関連して新電力の負担について聞いたところ、「増える」との回答が25%(12人)、「増えない」は0%だったのに対して、「どちらとも言えない」が33%(16人)、「わからない」が42%(20人)に上った。

 現行のスポット市場(前日市場)やベースロード電源市場が1kWh当たりの価格を決めて、発電した電気を取引するのとは異なり、容量市場は発電所の建設費回収の見通しを高めるのが目的で、発電容量1kW当たりの価格を決めて、小売電気事業者に「kW」価値の買い取りを義務付ける仕組みだ。

 同市場は2019年にも取引が始まるが、国内ではまったく初めての取引市場となるため、多くの新電力は自社の経営や事業への影響を推し量りかねていると言えそうだ。

 大手新電力幹部は「制度設計が終わっていないため、わからない部分はいまだ多いが、新電力に負担となるリスクは多分にある。新電力としては問題意識を持って備えるべき」と警鐘を鳴らす。経産省が進めている議論などの情報を収集し、新市場のイメージを持つことがリスク管理につながる。局面によっては、新電力が声を上げる必要もあるだろう。

 日経エネルギーNextビジネス会議は、支配的事業者である大手電力と新電力の競争状況や、新市場の行方や影響について今後も継続的に議論していく予定だ。

小売電気事業者が集う「日経エネルギーNextビジネス会議」
2016年4月に電力小売りが全面自由化を迎え、小売電気事業者の登録数は400社を超えました。大手電力からの契約の切り替えは徐々に進むものの、まだまだ黎明期。ビジネスの現場では日々、新たな課題が生じています。本会議は小売電気事業者を対象とした会員組織です。悩みを共有し、解決策を模索しながら、日本のエネルギー市場が成長していくことを目指します。詳細はこちらをごらんください。