この点についても、会合では複数の参加者から意見が寄せられた。ある新電力幹部は、「確かに値引きは自由化の恩恵だろう。ただ、大手電力が新電力の顧客、もしくは新電力が新規開拓しようとしている顧客だけに値引き提案をしているのであれば問題ではないか」(新電力幹部)と発言。

 また、別の新電力幹部は、「関電社内では『カウンターパンチ』という隠語がある。我々のような新電力への対抗を指す言葉だ。関電エリアでの新電力ランキングを並べて引き剥がしにかかっている」と語った。

 「大手電力が新電力の顧客にだけ値引き提案をしているとしたら、それは独禁法違反ではないか。もし、すべての顧客に対して値引き提案をしているのであれば、我々としては常時バックアップの価格の低減などを求めたい」という意見もあった。

 とはいえ、顧客と直接の接点を持っている新電力ですら、大手電力の提案や契約の実態は見えにくいという。ある新電力幹部が、「お客様は守秘義務で固められて、(大手電力が提示した料金などを)我々に話しづらい状況にある。大手電力の値引き提案は、基本的にお客様は困らない話。特定の新電力を狙い撃ちしているとしても、証拠はない」と発言とすると、会場は重々しい雰囲気に包まれた。

 議論の終盤では、複数の参加者から「個社で監視委員会や公取委に訴えても、なかなか状況は変わらない。複数の新電力で連携して申し立てをすべきではないか」という意見が寄せられた。

 「大手電力の値引き攻勢の前に、為す術がない」。こう語る新電力は少なくない。公正な競争環境が整うことは、電気事業に参入したすべての事業者の願いだろう。ただ、明るい兆しもある。

 監視等員会は10月17日、「競争的な電力・ガス市場研究会」を立ち上げた。競争を促進するための規制の運用を議論するとしている。

 議論は非公開だが、監視委員会が公表した検討事項案には、「他社へのスイッチングに際して、約款等において事前周知及び当該市場支配的事業者との交渉を義務づけたり、または、高額の違約金を課したりすることについて、競争を促進する観点からは、どのように考えるべきか」といった論点も挙がっている。公正な競争環境の整備に資する議論であることを期待したい。

容量市場は「よくわからない」

 この日は、もう1つのテーマとして「新市場」を取り上げた。現在、経済産業省は「ベースロード電源市場」「容量市場」など複数の新たな市場の創設を目指して議論を進めている。日経エネルギーNextビジネス会議では、新電力が新市場をどう評価しているのか、緊急アンケートを実施した。

 ベースロード電源市場は、大手電力が保有している原子力や大型水力、石炭火力といったベースロード電源を供出する仕組みだ。新電力は新市場を通して、これまで大手電力が事実上独占してきたベースロード電源を調達できるようになる。