将来の供給力不足を回避するのが容量市場の目的である。例えば4年後から5年後までの1年間のkW価格(発電容量1kW当たりの価格)をあらかじめ決め、当該年に支払いが発生する。これを毎年続ける。

 その際、価格はシングルプライスオークション方式で決める案が有力だ。発電事業者は電源単位で「kW価格」と「kW量」からなる売り入札を行う。kW価格が安い順に落札電源が決まり、必要なkW量(容量の確保目標)に達した最後の電源のkW価格が約定価格となるのがおおよその仕組みだ。

 ザックリ言えば、1kW当たりの建設費が安い電源ほど落札の可能性は高く、容量市場では収益を上げやすい。当該電源のkW価格と約定価格の差分が利益になるためだ。

固定費の安い電源が有利

 電源の発電コストは、固定費(建設費など)と可変費(燃料費など)の足し算で決まる。電源には原子力、水力、石炭火力、ガス火力、石油火力などの種類があるが、それぞれの電源の固定費と変動費にはトレードオフの関係があり、その特徴をうまく組み合わせることで全体コストの最適化(ベストミックス)を実現する。

 容量市場とは、燃料費は高いが建設費は安い石油火力などが優位な市場で、建設費が最も高いとされる原子力などの固定費回収には向いていない。仮に落札したとしても、利益(kW価格と約定価格との差分)は相対的に小さいはずだ。

 では、固定費が高い電源はどうすればいいのか。市場取引で固定費を回収しようとするならば、実際に発電した電気の1kWh当たりの価格を決めて売買する「kWh市場」が適している。電力の主力市場と呼ばれる日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場がその代表だ。

 というのも固定費が高い電源は一般的に燃料費が安い。限界費用(燃料費相当)で売り札を入れれば、落札の可能性は高く、利益(限界費用と約定価格の差分)も相対的に大きくなる。その利益を固定費回収に充てるわけだ。仮に価格が日々変動するスポット市場だけでは収入の見通しが立ちにくいとすれば、一定期間のkWh取引を約定する先渡市場の活性化などが望まれる。容量市場ができても、「kWh市場が電力のメインの取引市場であることは変わらない」(経産省幹部)。

 単純だが、こうしたkW市場(容量市場)とkWh市場(スポット市場など)の“役割分担”ついてイメージを持っておくことは、今後の議論を理解するうえでも有益だろう。容量市場は、燃料費は高いが、日々の需要の上振れや年間の需要ピークへの対応に欠かせない電源により適している。kWh市場での約定機会が少ない電源の固定費回収を助ける性格が強い市場なのだ。

 経産省は容量市場について「投資回収の予見性を高めるための措置」であり、「理論上は電力調達の総コストは変わらない」と説明している。つまり、小売電気事業者は容量市場を通してkW価格を発電事業者に支払うことになるが、その分はkWh市場の価格が下がるはずという理屈だ。