ジリジリと迫る東京ガス包囲網

 東電F&PとJXTG、大阪ガスの新会社が東ガスに与えるインパクトは、品川火力を失うことだけではない。東電グループは、世界最大のLNG購入量を誇るJERA(東京都中央区)からLNGを調達。新設する熱量調整設備で都市ガスを製造し、東ガスの導管を使って、東ガスエリアで販売しようと目論んでいる。

 東電EPに加えて、JXTGと大阪ガスも念願の首都圏でのガス販売を実行に移すだろう。東ガスの100%シェアを脅かす強敵が、揃って誕生したわけだ。世間では「東ガス包囲網」などと言いはやしている。

 いよいよ聞こえてきた自由化の足音に、東ガス広瀬社長も危機感をにじませる。「ガス自由化当初は、西高東低とか東ガス戦線異常なし、などと言われた。だが、ここへ来て(首都圏の)ガスも競争が活発化してきた。ビッグネームがマーケットに参入してくる。ビッグネームがさらにアライアンスを組んでくる。ある程度想定はしていたが、現実になると非常に危機感があるというのが実感だ」。

 会見で東ガス包囲網について問われると、ちらりと本音ものぞかせた。

 「包囲網と言われると、だんだん包囲されているような気持ちになる。なんとなく慌てるというか。冷静に見れば、色々な事業者が東京ガスエリアに入ってくれば包囲網になる。冷静に理解しようと思っているが、報道されればされるほど、なんとなく浮き足立っている」

 東電らの新会社が新設する熱量調整設備は、完成までに数年を要する。東ガスが本格的にガス需要を奪われるのは、2020年よりも、もう少し先になるだろう。主力のガス事業の売上減少分を電気やサービスで埋めることができるのか。中計で掲げた「GPS」の成否こそが、東ガスの今後を示す試金石となるだろう。

■変更履歴
記事掲載当初、「東ガスは年間30万m3のガス販売量を失った」としていましたが、「年間30万m3」ではなく「30万世帯相当分」の誤りでした。また、「品川火力向けの100万m3」としていましたが、正しくは「品川火力向けの都市ガス」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/10/25 17:36]