COゼロ社と米国のベンチャー2社の計3社と協議を重ね、そのうち2社と実証を行ったという。「両社ともサービス提供は問題なくできることを確認した。ただ、COゼロ社の方がコストが安く、入力が必要なデータ量が少なかった。人手を割けない当社にとって、この点は大きかった。国内では3年間の独占提供を約束してくれたことが決め手になった」とエネットの五郎丸氏は明かす。

 COゼロ社は、自国オーストラリアでは、同国最大の電力会社、オリジンにAIエンジンを提供。オリジンは2016年に自動省エネ診断サービスを始めた。実は、COゼロ社はAIベンチャーであると同時に電気事業者でもある。オリジンやエネットとの協業だけでなく、自社顧客にもサービスを提供している。

 電気料金が高く、電力会社間の競争が激しいオーストラリアで生き残るには、自動省エネ診断が差別化要素になるとCOゼロ社は考えたようだ

豪AIエンジンは日本のデータを学習させる

 Ennet Eyeの仕組みはこうだ。

 まず、顧客の使用電力量の30分値は、スマートメーターから一般送配電事業者のサーバーに集められる。エネットは、このデータを自社のメーターデータ管理システム(MDMS)に引っ張ってくる。MDMSと接続した顧客管理システム(CIS)がオーストラリアにあるCOゼロ社のサーバーとつながっており、COゼロのAIエンジンがエネットの顧客の建物ごとに、使用電力量データと建物の住所から割り出した気象データを使って、自動で省エネ診断を行う。

 AIエンジン自体はCOゼロがオーストラリアでのサービスに使っているものと同じだ。オフィスやホテルなどの施設の電気の使い方は、日本とオーストラリアで大きく変わらないので問題ないという。ただし、AIエンジンの機械学習は、日本の需要家のデータで行っている。「昼休みに消灯する」といった日本の風習も考慮してある。

 自動省エネ診断の場合、AIが解析するデータの量が多いわけではなく、技術的に難しいところはさほどない。ただ、「アラートが上がった内容のうち、どこまでを顧客に通知するのか、どういった形で伝えるのかといった人とのインタフェースの部分が大切だ。通知する、しないにしても、ノウハウによるところが大きい。先行してサービス展開することで、ノウハウを蓄積したい」(エネットの五郎丸氏)。