エネット経営企画部事業開発室の五郎丸章裕課長は、「お知らせした対策を実行してもらえれば電気料金は5~10%ほど下がる」と説明する。

 空調や業務量の増加によって使用電力量は変動しやすい。例えば、早朝に出勤する人がいたり、夜中に掃除業者が入ることでも電気料金は上昇する。Ennet Eyeのターゲットである中規模ビルの場合、BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)が入っていることは稀であり、専門の管理者が電気の利用状況を見ているケースも少ない。

 「見える化ツールで使用電力量が増えていることを把握しても、多忙な業務の中で原因を特定するのは容易ではない。しかも、1人で数十~数百の建物を管理している人もいる。1つ建物だけでも原因を特定できないのに、複数の建物の状況を把握し、改善していく手間は計り知れない」(エネットの五郎丸課長)

 ただし、Aルートデータ頼みのEnnet Eyeの場合、使用電力量の上昇理由が、例えば「照明である」というところまでは分かる。だが、照明ごとにセンサーを付けているわけではなく、省エネコンサルタントが現場を見にいくこともないため、どの照明が原因なのかは特定できない。あくまで建物全体の使用電力量の変化と気温の相関関係からの推測にとどまる。

 だが、複数の建物を管理し、それぞれで電気料金を上昇させそうな状況を把握し、おおまかな原因と対策を翌日に通知できるスピード感は、自動省エネサービスならではだ。

 「使用電力量の上昇要因が読みやすい中規模ビルならば、これで十分だ」とエネットの五郎丸課長は胸を張る。

海外ベンチャー3社の技術やコストを検証

 エネットが使用電力量の「見える化」サービスを始めたのは2005年にさかのぼる。既に10年以上、サービスを提供してきたものの、「見える化だけでは、どうしたら電気料金を抑えられるのか分からないという要望が多かった。対策まで示さないと意味がないと常々感じていた」(五郎丸氏)という。

 そこで3年ほど前から、Aルートデータを使った自動省エネ診断サービスの提供を検討し始めた。AIを活用した省エネサービスで先行する米国やオーストラリアにもパートナーを探し求めた。