世界最大のLNG(液化天然ガス)消費国、日本。かねてオイルメジャーや産ガス国はLNGの売り主として、日本を“お得意様”にしてきた。そうした資源大手が商習慣を改めようとしている。

 「公正取引委員会が報告書を公表したのを境に、売り主に変化が見える。リーガルの威力は凄い」。JERA販売・調達・燃料事業本部 販売・調達部長の佐藤裕紀執行役員は驚きを隠さない。公取委が6月28日に公表したある報告書が、オイルメジャーや産ガス国に大きなインパクトを与えているという。

 その報告書は、「液化天然ガスの取引実態に関する調査について」というもの。LNG取引で売り手企業が買い手の転売を制限する契約などについて、独占禁止法違反のおそれがあるとした。

 今回、公取委が指摘したのは、主に3点。第1が「仕向地条項」と呼ばれる契約手法である。LNGの売り手が買い手に対し、LNG船の輸送先となるLNG基地(仕向地)をあらかじめ指定し、仕向地の変更を認めないというものだ。例えば、買い手が需要減などによってLNGを余らせてしまっても転売できない。

 LNG取引には、LNGの引き渡し場所によって「FOB条件」と「DES条件」という2方式がある。FOBは輸出国の船積港でLNGを引き渡す方法で、輸送責任や所有権は船積港で売り主から買い主に移転している。このため、仕向地条項を設定すること自体が独禁法違反のおそれがあるとした。

 DESは日本の仕向港まで所有権などが買い主に移転しないため、仕向地条項の規定が、ただちに独禁法上の問題となるわけではない。だが、合理的な理由なく転売を拒否したりするのは問題だとした。

 第2の指摘が「利益分配条項」である。買い主がLNGを転売した場合に、買い主が得た利益の一部を売り主に分配することを義務付ける条項で、事実上、日本の買い主の再販売を制限してきた。公取委は、FOBにおける利益分配条項は独禁法上問題となるおそれが強いとした。DESにおいては、合理的でない利益分配や買い主の利益構造やコスト構造の開示を要求することにより転売を妨げる場合は、独禁法上問題となるおそれがあるとした。