卸電力市場、88%が「おかしい」

 会合ではもう1つ、卸電力市場をテーマに取り上げた。

 7月の卸電力市場は大荒れだった。気温の上昇が例年に比べて早かった今年は、6月半ばから主要な市場であるスポット市場でジリジリと価格が上がり始め、7月に入るとピーク時間帯(13:00~16:00)の平均価格が20円/kWhを超える日が目立つようになった。

 さらに第3~4週にかけては、日中の価格が30円/kWhを上回る日が続き、7月19日には13時~17時30分まで45.81円/kWhという異常な高値に張り付いた。

 電気の小売料金は、家庭向けの場合で30円/kwh程度(基本料金を含む平均)。この中には10円/kWh程度の託送料金(ネットワーク利用料)や営業費用が含まれる。電気の原価である市場価格が20円/kWhを超える水準にまで上昇すると、完全に採算割れになる。45円/kWhを超えるような高値では大赤字だ。

 この日、会議参加者を対象に実施した緊急アンケートでは、有効回答を寄せた42人中37人が、7月の値動きを「おかしいと思う」(88%)と回答。「おかしいと思わない」(1人、2%)、「そのほか」(3人、7%)を大きく上回った(無回答1人)。新電力のほとんどが7月の市場の値動きに強い疑問を抱いた実態が明らかになった。

 卸電力市場の大きな機能は、大手電力が独占時代に総括原価方式のもとで建設した電源(発電設備)で発電した電気を、適正価格で新電力に引き渡すところにある。大手電力は不測の事態に備えて確保している電源(予備力)を、実需給の前日に取引されるスポット市場に限界費用(燃料費相当)で投入することが事実上、義務付けられている。

 「(大手電力は)本当に限界費用で売り札を入れているのか」。「市場への投入量はルール通りなのか」。「電力・ガス取引監視等委員会はきちんと監視しているのか」。集まった多くの新電力幹部から大手電力や監視当局に対して疑問が投げかけられた。

 高値をつけた時間帯は多くの場合、売り入札量が極端に少ない。にもかかわらず、その高値がついた当日の時間帯で、需要を上回る余剰電力(余剰インバランス)が大量に発生するという不思議な現象がしばしば起きている(「電力市場の連日高騰に“制裁強化”原因説」参照)。「高値だった時間帯で、なぜ、当日になると余剰が出るのか。そこが問題」(新電力幹部)。大手電力が適切な入札行動をとっているのか、検証を求める声が相次いだ。

 スポット市場はその後、やや落ち着きを取り戻しているものの、8月も9日には42円/kWhをつける時間帯が出現するなど、不安定さは解消し切れていない。

 今夏の市場高騰を契機に、政府審議会でも市場監視の強化を求める声が高まっている。

 8月28日、監視委員会は、①(大手電力の)入札可能量や入札価格、②一部の大手電力小売部門が予備力確保を増やしている問題、③高値時間帯で余剰インバランスが出ている問題について精査すると表明した。

 その進捗は、日経エネルギーNext ビジネス会議でも注視していくことになるだろう。

 次回会合は10月13日に予定している。

■変更履歴
記事掲載当初、「大手電力の中に、供給地点特定番号の横に一律の数字を付けたものをお客様番号としているところが複数ある」としておりましたが、正しくは「大手電力の中に、お客様番号の横に特定の数字を付けたものを供給地点特定番号としているところが複数ある」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/8/30 13:02]

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