お客様番号は「なりすまし防止」のためだったのに・・

 もう1つの番号である「お客様番号」についても、様々な声が上がった。

 「お客様番号は全面自由化に先立ち、電力広域的運営推進機関で議論があり、なりすまし防止のために大手電力がかねて使用してきた番号を使うことになった経緯がある。だが、実際にはなりすまし防止効果はほとんどない」(新電力幹部)。大手電力の中に、お客様番号の横に特定の数字を付けたものを供給地点特定番号としているところが複数あるためだ。供給地点番号とお客様番号が事実上、同じモノというわけだ。

 顧客は、「電力会社のお客様番号」と聞いても、何の番号なのか、さっぱり認識していない。しかも、新電力もそれぞれが独自に顧客番号を付与していることが多い。「せめて新電力の間だけでも、お客様番号の統一ができないか」という意見や、「電力のスイッチングにお客様番号は不要なのではないか。供給地点特定番号だけで十分だ」という意見もあった。

「新築の契約が取れない」という切ない実態

 全面自由化から2年半が経過したが、いまだに2つの番号を巡る混乱は収束していない。例えば、「一般送配電事業者から聞いた番号で処理したところ、まったく違う家だった」という事例が複数の新電力から聞かれた。顧客対応は小売電気事業者が請け負うが、一般送配電事業者との間で起きたトラブルの解決方法は、手順なども定まっておらず、苦戦している様子がうかがえた。

 早期の解決が必要な問題点も明らかになった。それが、新築物件など「供給地点番号を持っていない顧客の新規契約」である。ちなみに、新規契約は業界用語で「再点」と呼ぶ。

 「新築物件の現地に行って、設置済みのメーターに記載されている供給地点特定番号を一般送配電事業者に伝えても、『まだシステムに未登録』という理由で受け付けてもらえない。お客様にいったんは大手電力と契約してもらい、大手電力から当社にスイッチングしてもらっている」(新電力幹部)

 新築物件は小売電気事業者にとって重要な営業先。だが、手続き上の不備で正常な営業ができてない実態がある。「再点は非常に問題。改善を求めていきたい」という声が上がった。