ベースロード電源市場は、大手電力がもっぱら売り手になり、新電力が買い手となる。自由市場とは異なり、大手電力にベース電源の供出を義務付ける「強制玉出し」(制度的措置)が最大の特徴だ。

 「市場」とは呼ばれるものの、現在、新電力が需要量の一部を大手電力から定額(全電源平均コスト)で購入できる「常時バックアップ」の衣替えと位置づけられる。そのため、売り手や買い手の行為を規定するルールづくりが制度設計の柱になる。

 第1の焦点は「価格」と「量」だ。ベース電源へのアクセス改善が目的だから、新電力が大手電力が自社で利用しているベース電源と同等水準の価格で必要な量を調達できなければ意味がない。

 価格に関しては大手の売り入札価格をルール化する。経産省案は、石炭、原子力、一般水力などからなるベース電源の「平均発電コスト」から、「容量市場収入」を控除して売り入札価格の上限を決める案を提示した。

 容量市場とは自由化後も将来にわたって安定供給の維持に必要な電源を確保する観点から、電源の固定費の一部を小売電気事業者から確実に回収するための新たな仕組みで、ベースロード電源市場などと並んで今後、制度の詳細を詰めていく。

制度措置のはずなのに「価格」も「量」も見通せない

 スポット市場が余剰電源の限界費用(燃料費相当)ベースで売り投入することが事実上のルールとなっているのに対して、ベースロード電源市場における平均発電コストには固定費も載ってくる。具体的には、発電電力量(kWh)当たりの固定費と燃料費を足し合わせて平均発電コストを算出する。そこから容量市場収入を差し引くのは、固定費の“二重取り”を防ぐ狙いからだ。

 固定費を含む価格で投入されることは市場創設案が出された昨年12月時点で想定されていた。だが、多くの新電力を驚かせたのは、今回の経産省案には平均発電コストに「未稼働電源の固定費を含む」ことが明記されていたことだ。つまり、再稼働前の原発など、停止中のベース電源の固定費も売り入札価格のベースに算入することが認められる。

 平均発電コストに未稼働電源の固定費を含むとしたことについて経産省は、「競争環境の整備において、大手が負担しているコストの回収を禁じることは適切ではないため」と説明する。