容量市場収入については、容量市場の議論が進んでいない現段階では見通せない。だが、仮に売り手となる大手電力がルール上許容される上限価格で売り札を入れ続けた場合、「はたして買い手がつく価格になるのかは疑問」(新電力幹部)と感じている新電力が多いのも事実だ。現行の常時バックアップやスポット市場の方が安いとみなされたり、予測されたりすれば、ベースロード電源市場では当然、買い控えが起こる。

 もう1つの焦点である市場への供出量は、全国総需要(kWh)に大手からの離脱率をかけ合わせたものを新電力の総需要とし、これに「ベースロード比率」と調整係数(0~1)をかけて算出するとした。調整係数は卸供給における大手の支配力が弱まれば、供出割合を下げていくという考えを反映するものだ。具体的な算出法は決まっていないが、当初は「1か1に近い値」を想定しているという。

 有識者会議の場では、取引開始予定の2019年における離脱率を12%(2016年比3ポイント上昇を仮定)、ベースロード電源比率には2030年のエネルギーミックスで想定している「56%」を当てはめ、当初の供出量は約560億kWhと試算した。新電力の想定総需要の56%としたわけだから大きな数字に見える。

 だが、これはあくまで市場への投入量であって、約定量ではない。新電力が調達できるベース電源量とは直接関係はない。「約定量は結局、市場価格で決まってくる。高値の売り入札が多ければ、約定量は小さくなる」(新電力幹部)。つまり、仮にベース電源を新電力に極力渡したくないと考えれば、大手は上限価格で売り入札を続けることもできる。

 平均発電コストをベースとする売り入札で、市場価格が期待ほど安くなると思えないのは、今後、電力需要の減少が想定される中で、かつて需要の伸びを見込んで建設された古い電源や停止中の電源を含めた既存電源の固定費がすべて載ってくるとすれば割高にならざるを得ないと考えられるためだ。

取引が増えなければ元も子もない

 ベースロード電源市場は、24時間使い続ける電源の供出という制度趣旨から、受け渡し期間を1年に設定した先渡し市場とする。翌日1日分の電力を取引するスポット市場とは電気の供給形態を区分けするだけでなく、ベースロード電源市場で調達した電気をスポット市場で売りさばく裁定取引を制限し、両市場を切り離す。その手法として、買い手となる新電力ごとに購入枠(上限)を設定し、実需を超えた調達を抑制する案が提示された。

 だが、新電力のベース電源へのアクセスを助ける制度的措置としながら、肝心の安価な電力の調達を保証するような仕組みが盛り込まれているようには見えない。