7月中旬以降、連日の卸電力市場の高騰で、買い手である新電力が悲鳴を上げている。その背景に「同時同量」の順守を促す制裁強化の影がちらつく。実態からかい離した市場の歪みを放置したまま、制裁だけを強化すれば事態はかえって悪化しかねない。

7月中旬以降、昼間時間帯で電力価格が高騰

 「これが続いたら破綻する新電力が続出する」(新電力幹部)――。

 日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場では7月中旬以降、平日昼間時間帯の卸電力価格が高騰する事態が続いている。

 東京電力グループ管内での取引価格である「東京エリアプライス」は、7月13日13時30分から17時までの3時間半にわたって30円/kWhの高値をつけた。これは家庭向け平均小売料金を上回るような水準で、到底、利益は望めない。この傾向は、翌14日(最高値40.01円/kWh)、連休明けの18日(同31.17円/kWh)と続き、19日は13時~17時30分まで45.81円/kWhという超高値に張り付いた。こうなると完全に赤字だ。

 6月のピーク時間帯(13~16時)の市場平均価格は9.4円/kWhほどだった。7月上旬は気温上昇に伴う冷房需要の増加などから前月比で1割ほど高い水準で推移していたが、中旬に入っての連日の高騰に買い手となる多くの新電力は狼狽した。

 ある新電力幹部は「もうメチャクチャ。4~6月の利益がこれで飛んでしまう」と悲鳴を上げる。市場価格の高騰がもたらすダメージは、電力調達を市場に頼る割合が高い事業者ほど大きい。市場価格が小売料金を上回る逆ザヤ現象の頻出は、とりわけ余力に乏しい新興の中小新電力などの資金繰りを直撃することになる。

 小売電気事業者の間では、高値の背景を探る様々な憶測が飛び交った。1つは、4月から始まった大手電力による「グロスビディング」の影響だ。大手電力が「卸電力活性化」と「取引の透明化」を促進する観点から表明した取り組みで、自社の顧客に供給する電力の一部をいったん市場に拠出し、買い戻す。

 売買両建て取引であるグロスビディングは通常、市場価格への影響は中立といわれる。だが、この7月は最高気温が平年を上回る暑さで、冷房需要がいつもより早く立ち上がった。当初の計画を上回った需要に対応するため、大手電力が高値で買い戻したとの推測だ。その影響で市場価格がつり上がった可能性がある。

 市場関係者の間ではそのほか、事前に予測しにくい太陽光の発電量の想定外の変動が需給ひっ迫を招いた可能性も挙がった。だが、今回、新電力へのヒアリングではもう1つ、それまで市場関係者が予測していなかった意外な理由が浮かんできた。

 複数の新電力が口をそろえたのは「電力広域的運営推進機関の通達や指導が効いたのではないか」というものだ。

 電力需給を司る広域機関は6月14日、「適正な計画提出について」と題した1通の通達を発した。一言で言えば、自社需要に見合った供給力をきちんと確保しろという内容だ。

 小売電気事業者には、電力調達量に相当する「需要計画」と需要実績を一致させること(計画値同時同量)が求められている。だが、ペナルティ性を弱めた現行の「インバランス料金」制度が同時同量のインセンティブとして十分に機能していないと見た経済産業省や広域機関は、インバランス料金制度の改定と並行して制度的な“制裁”を強化する方向で事業者に計画順守を促す構えを見せている。