大手電力のオープンイノベーションへの取り組みが活発化している。筆頭株の東京電力グループに至っては、パートナー企業との新会社設立を発表しない月がないくらいだ。
そんな中、4月にひっそりとスタートを切った新会社がある。中部電力とインターネットイニシアティブ(IIJ)が設立した合同会社、ネコリコ(東京都千代田区)だ。資本金は1億円。出資比率は明らかにしていないが、中部電とIIJから3人ずつが出向している。
ネコリコは、家庭向けIoTプラットフォームの提供を目的としており、「necolico HOME +(ネコリコホームプラス)」という名称で、9月にサービスを開始する予定だ。
このサービスは、家電コントローラーや環境センサーなどの様々なIoTデバイスを、ネコリコ開発のLINEアプリで制御できるようにするもの。デバイスメーカー各社がそれぞれに開発した操作用アプリを使うのではなく、ネコリコのアプリ1つで操作できるようにする。ホームIoTともコネクテッドホームとも言われる注目領域だ。
実は、このネコリコホームプラス、中部電と大阪ガスが折半出資するCDエナジーダイレクト(CDED、東京都中央区)のサービスの目玉の1つとして開発されている。
中部電と大阪ガスの首都圏進出の目玉に
CDEDは中部電と大阪ガスが首都圏で電力・ガスを販売するために設立した新会社だ。かねて蜜月と言われてきた両者がタッグを組み、エリアに閉じたエネルギー事業者からの飛躍を目指す戦略的事業会社である。(「中部電と大ガスが狙う“全国掌握”」を参照)。
CDEDの設立は2月。5月に小売電気事業者とガス小売事業者の登録を終え、6月11日に首都圏における電力とガスの販売を開始したところだ。東電エナジーパートナー(EP)や東京ガスのほか、数多くの新電力がひしめき合う首都圏での差別化にコネクテッドホームを活用する。
CDEDは電力・ガスの販売開始に合わせて、サービス第1弾の「ここリモ」をスタート。リアルタイムで睡眠状況を把握しエアコンを自動制御するサービスで、中部電が寝具メーカーのエアウィーヴ(東京都中央区)、IoTベンチャーのSassor(東京都渋谷区)と実証試験を行い、開発したものだ。
ここリモは今後、ネコリコホームプラスとも連携。ネコリコが取り扱うIoTデバイスと同様に、ネコリコが提供するLINE上で簡単に操作できるようになる。また、大阪ガスが提供するガス機器の遠隔監視などのIoT機器に関しても、同様にネコリコのLINEで状況を見られるようにする。