他社は追随しない?「公平性」というハードル

 発電所種別に付加価値を付けた電力メニューの登場は、まさに電力自由化の下で初めてなし得る技と言えるだろう。現在の供給地域は東電エリアだけだが、今後は子会社のテプコカスタマーサービスを通じて、全国に広げることを検討しているという。だが、他社の追随は簡単ではなさそうだ。

 まず、一般水力発電を保有しているのは大手電力会社や地方自治体が中心。水力による電気を調達したいという新電力は数多くあるが、なかなか調達できない実態がある。つまり、新電力には提供したくてもできないメニューなのだ。

 しかも、他の大手電力は東電EPの動きを遠巻きに見ている状況だ。ある大手電力幹部は、「公平性の観点から、水力100%電気の提供は考えられない」と言う。

 大手電力には独特な公平意識が浸透している。大手電力会社の社員から「安定供給」の次いで良く聞かれる言葉が「公平性」だ。公益性の高い電気事業を提供するに当たり、需要家(利用者)には等しく公平であるべきという意識である。

 水力発電は発電コストが安い。一部の需要家に水力発電による電気を割り当て、環境価値という付加価値を付けて高く売ることができれば、収益性は高まる。だが、他の需要家にとっては、供給される電力のうち、原価が安い水力発電が減った分、発電コストが上昇することになる。需要家に対して等しく公平でありたいという企業マインドとは相反する部分があるようだ。

 実際、東電グループでも、今回のサービス開発に際しては色々な議論があり、反対した社員も実際にいた。だが、当時東電EPの社長だった小早川智明氏(現東電ホールディングス社長)は、「良いメニューだから是非やろう」とサービス化を即決したという。

 長らくメニューも料金も横並びだった大手電力会社。だが、台風の目となった東電グループから、横並びは徐々に崩れ始めていると実感できる新メニューだ。