電力の安定供給の一環として新電力などの小売電気事業者や発電事業者に課されている「同時同量(需給管理)」。だが、全面自由化を契機に導入した新制度の下で、ルール通りに同時同量をしないことが儲けにつながる状況が発生していた。新電力の参入を助けるはずの新制度を逆手に取った行為に非難が集まっている。

 「参入要件が低くペナルティ性も緩いと、こういうことが起きる」。6月6日に開かれた経済産業省の有識者会議(電力・ガス基本政策小委員会制度検討作業部会)で委員の1人が憤慨気味に指摘した。

 俎上に上ったのは「インバランス料金」の算定方法の見直しだ。

 小売電気事業者や発電事業者は電力広域的運営推進機関に事前に提出した需要量や発電量の計画と、当日の実績を30分単位で一致させることが規定されている。電力の安定供給に欠かせない需給管理の責任を事業者が個々に負う。これを「計画値同時同量制度」と呼び、2016年4月の全面自由化に合わせて、それまでの「実同時同量制度」を置き換えて導入された。

 インバランス料金は計画値と実績値にズレが生じたときに小売電気事業者や発電事業者が負担する精算金を指す。ズレを生じさせた事業者に対するペナルティの意味があり、本来は事業者に対して計画順守のインセンティブとして働くはずのものだ。

 ところが、導入された新制度においては直後から「インバランスを出した方が儲かると予見できる事態が生じていた」(経産省幹部)。このことは既に昨年8月の時点で経産省自身が問題提起しており、悪質と見られる意図的なインバランスを出す事業者に対しては、電気事業法上の「供給力確保義務違反」などで処分する可能性も示唆していた。

 経産省側からすれば、新制度導入からほどなくして見直すのははばかられた面もあるだろう。その後、事態の推移を注視する姿勢をとってきた。

 「昨年8月から11月ころまでは大きな問題は生じていなかった。しばらくは経産省の注意喚起も効いていたのだろう。ひどくなったのは年明けから」と経産省幹部は打ち明ける。

 現行のインバランス料金単価は、卸電力市場の価格をベースに「α値」と「β値」という2つの調整項を掛けたり、足したりして算出される。

インバランス料金単価=αX+β
  X:スポット市場価格と1時間前市場価格の加重平均
  α:全国のインバランス発生状況を踏まえた調整項
  β:エリアごとの需給調整コストの水準差を踏まえた調整項