ある大手電力幹部は、「利益は三分法がこれまでの習わし。事業モデルの特性を考えれば、発電の利益率は高く、小売りは低いが、そうはしない。全体の利益を、発電・送配電・小売りで3分割するという意味」と明かす。東電グループは分社化したものの、「いまなお三分法を取っている。つまり、東電EPは小売事業による利益以上の値引き原資を持っている」(同)。

 東電グループのコスト構造は、さらに見えにくい部分がある。別の大手電力幹部は、「現在の東電のコスト構造は同業者の我々から見てもブラックボックスだ」と言う。この幹部はこう続けた。

 「原発事故の対応費用の不足は、交付国債で賄っている。普通の会社なら資金調達への影響を恐れ、業績悪化を避けたいと考えるが、カネが足りなければ国債で賄えるという特殊な状況にある。しかも業績が悪化すれば特別負担金(東電が福島に還元するお金)が減額される。加えて、停止したままの原子力の固定費をどの部門が負担しているのかなども見えない」

 東電グループが福島への責任を果たしていく過程で、国民負担の議論はついて回るだろう。国民負担の前提には、経営の透明化があり、東電グループには説明責任がある。本来、福島に還元されるべき収益が、例えば、一部の大口需要家向けの値引き原資に回されているというのでは、説明がつかない。

 東電グループの経営が透明化され、公正に競争をしたうえで、福島へ利益が還元されるのであれば、国民負担への納得感も、おのずと高まっていくはずだ。

 日本の電力市場の問題点を突き詰めていくと、電源の独占に行き着く。大手電力が電源の大半を保有し、電力市場が未成熟であるがゆえに、新電力の電源へのアクセスが非常に限定的な状況がつづいいている。この構造こそ、電力システム改革の最大の課題だろう。後編でお届けする高圧部門での営業合戦は、まさに電源問題と表裏一体だ。

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