電力に続きいよいよ都市ガスも完全自由化の幕が開いた。政府が目指すエネルギー市場改革が大きく前進した。にもかかわらず、メディアの報道は「盛り上がりを欠く」がまるで合い言葉のようになっている。本当だろうか。

 家庭など小口市場に新たに参入するガス小売事業者は全国で12社にとどまる(3月末時点)。電力では全面自由化が始まるまでに250社を上回る新規参入があり、1年を経た今日では400社以上に膨れあがっている。活気の違いは明らかだ。卸市場などが未発達でガスの入手が容易でない都市ガス事業は、電気に比べて参入障壁が確かに高いと言える。

 経済産業省によると、1月から始まっているスイッチング(購入先の切り替え)の先行申し込み数は全国で9万2400件に上る(3月24日時点)。このうち、7万1200件が関西エリアだ。

 「使用量が多くても少なくても、季節・時間帯に関係なく大阪ガスの一般料金(規制料金)よりお得です」。関西エリアは関電が大ガスに対して低価格攻勢をかける。昨年末に一度新料金を発表したが、1月に大ガスが新料金を発表するや、すぐさまそれを下回る料金に差し替え、料金競争で一歩も引かない姿勢を見せつけた。テレビCM合戦も激しい。企業が動けば、消費者が関心は引き寄せられるのだ。

 だが、ホットな競争はこれまでのところ関西に限られる。激戦が予想された関東エリアはスイッチング申し込みが3280件と関西エリアの20分の1以下とすこぶる低調だ。東京ガスの最大のライバルとなるはずの東京電力エナジーパートナー(EP)が、システム開発の遅れから小口市場への参入を7月まで延ばすのが響いている。

 さらに痛手なのが、東電EPはこれまで大口向けに電力用と同じ熱量調整をしていない生ガス(未熱調ガス)をガス事業の柱としてきたため、東ガスの導管を利用するのに必要な熱調ガスを現時点では自社で製造できない弱みがあることだ。自前の熱調施設が完成するのは2018年の秋口。それまでは、東ガスの熱調設備を借りて製造できる分が供給力の上限になってしまう。スロースタートは避けられない状態なのだ。

 それでも、つぶさに見れば、激戦の予兆を見て取れるのが関東エリアだ。小口市場に新規参入する全国12社(都市ガスの越境販売を含む)のうち9社が関東勢。関東以外で新規参入があったのは3つのエリアで、それぞれ関電、中部電力、九州電力といった大手電力が1社ずつしかない。いずれも大ガス、東邦ガス、西部ガスというエリアの大手都市ガスとの一騎打ちの構図だ。

 これに対して関東では東電EPのほか、異業種からはLP(液化石油)ガス事業者4社が参入する。自社の旧エリア外への越境販売を届け出た都市ガス事業者も4社ある。